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翌朝、昨日から感じつつある怠さを拭い切れず爽快とは程遠いといった様子で目醒め、見えない重圧を振りほどくように身体を起こし着替えを終えて階段を降りる。
洗面所で身支度を整える前に、そこへと続く縁側の廊下を渡りながら雨戸を開け、己の身を徘徊する憂悶を払うかに薄暗い室内へと朝の陽射しを採り入れて浴び。朝露に濡れた緑木に止まり鳴く蝉の声から今日も暑くなるだろうと予測して庭を見渡すも短命なる爽快さと蔓延る澱みを余す事なく換気させたく自然と開いた唇から有機が育んだ低温の大気をゆっくりと吸い込む。
それでもまだ寝ぼけてるのかとよぎる光景が視界に飛び込めば目の幅が狭まる。そんな最中、丸まったオレンジ色の背中が立て付け古い家屋からなる物音に気付き、此方へと振り返る。
「グッモーニン、サスケェ!」
笑顔でブンブンと片手を振り、もう一方では如雨露を動かす手。
「何やってんだよ、お前」
「何ってスイカを育ててんに決まってんじゃんよ、昨日した約束も忘れちまったんかぁ?」
「いや、そうじゃないが…」
まさか本当に来るとは思っちゃいなかった。
「そんじゃ、任務終わってからも、明日の朝もその夕方も明後日もその次の日もって、毎日来っから、ヨロシク!」
「オイ、待て…」
スイカの種を植えた場所へ水を撒いて直ぐ、家に上がることも俺に接触することもなく去ったナルト。
こいつとは数時間後にまた顔を合わす。
それなのに…何なんだ?
理由もなく断定も出来ない感情に見舞われてしまったからなのか、今朝はそんな数時間が普段よりも長くと感じ、任務に行けば行ったで遂行することのみに追われ。昨日の夕飯を用意してくれた礼も言えず、麺汁の指摘さえ出来ず。ナルトと会話する機会を失い、夕方も水遣りにきただけで去ってしまったナルトに鬱蒼を感じてしまった。
明日の朝も夕方もアイツは庭にだけ現れ、撒水を終えて直帰するだろう。
俺の側に寄る事も一緒に食卓を囲む事もなく……
こんな鬱屈に見舞われるほど、俺はナルトの言った『目に見えないもの』に囚われていた。
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