*5
予測が安直に決定する日々が過ぎ、早々と一週間が経っていった。
ナルトの顔色は日を重ねる毎に曇りを増す。
「…何で、芽も出ないんだろ。」
はぁ…と嘆いた息を吐き出し立ち上がり、丸めた背中を夕陽に照らし庭を去る。期待などはしちゃいない、当然だと最初から。
芽すら出る事のない土壌をアイツの足跡に靴裏を重ね、己の想いを照らしていた。期待感ばかりを募らせ、その内、諦めてしまうのかと。
目には見えず
耳にさえも届ず、
触れる事も出来なけりゃ、いずれ信じる力は薄れて行くのだろうか。
努力や想い、願いに希望を積み重ねた経路に残る痕跡の結果が思わしくないとすれば、何かに事由をつけて諦めてしまうのを当然とするか、足りない物を補うように更にと積み重ねるかのどっちかだが……ーーアイツは、間違いなく後者だ。
現実を受け止めても尚、諦めずと明日も明後日も水の入った如雨露を持ってこの庭にやってくるだろう。
「素麺の礼が、まだだったな…」
徒然とした時を与えちゃくれないアイツへと、心地良い溜息を吐き余計な節介に駆られた事は礼だと庭を一旦離れ、まだ時間があると計らう。明朝には騒がしくなるだろう、その光景を瞼裏に浮かべつつ……ーー。
「うぉおおおーー!!」
翌朝、けたたましい声で目を覚まして庭へと向かう。
「朝から馬鹿デカい声だしてんじゃねーよ、うすらとんかち。」
愚痴めいて、もう見慣れた背中へ近付こうとサンダルを突っ掛けると、咄嗟と振り返ったナルトが酷く物言いたげな瞳と唇をワナワナと震わせながら俺へと走り寄り腕を掴んだ。
「やっと…、やっと…出たんだってばよ!」
「朝からスッキリして来たのか?野菜、食わないクセしやがって通じはいいんだな、…お前。」
「バーカッ、ちげーよ!!朝の爽やかな気分を台無しにするようなことサラッと言ってんじゃねーぞ、このバァーカッ!!」
体を斜めに倒す勢いで訴えたかと思えば直ぐさま俺の背後へと回り込み背中を押し、その付加力に数歩早足となり前へと踏めば今度は肩をぐいと押さえ腰を下ろすよう指示される。
「出たっつーのはな、これだよ!こ・れッ!…ーーまだ、小せェけどな。」
ナルトが指差す方向、スイカの種を埋めた石柵向こうへと視点を置くと肥料土から緑色深い二葉が幾つか顔を覗かせていた。
「……まさか、本当に出るとはな。」
「へへ…、やっぱ信じるって大切だろ?」
そう言うと得意満面な顔で整列した歯を見せ笑い、隣にいる俺の肩を気安く叩いた。
「それより手入れのが大事なんじゃねーか?」
「手入れって、このビニールとか?
なあなあ、これっ何?…もしかしてサスケ、お前がやったんか?」
「ああ、カカシから訊いてビニールを被せてみた。スイカはこうしなきゃ育たねーとかほざいてたんでな。」
「へェー、ビニールが必要だったんか。」
「…らしいぜ。」
「なあ、水やるときはこのビニール取っちまってもいいんか?」
「穴、開いてっからそのままで構わない。とにかくビニールは被せたままにしとくんだぞ。」
「了解!そんじゃビニールの上から…」
嬉しそうにニコニコと笑い、足元に置いてある如雨露を手にして立ち上がり機嫌良くと水をやる。
こんな溌剌としたナルトの顔をみるのは久しぶりだ。
やはりコイツには笑顔が似合う。
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