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思い出した約束

光放つ洞窟より聴こえた声の主が大地を踏み、顔を上げ外観を眺める。

その相貌は悪鬼と思えぬ純真無垢なもの。

凝り固まった執念や概念が失せた柔軟なる表情は幼い頃にも見せた事がないだろう。纏うチャクラも聖に近しとする暖かさを帯びていた。


「‥サ、‥スケ…」

サスケに向けられた細い視線は愛らしささえ滲み出、幼さを醸し出していた。


「‥好‥…大き」



「…ナルト、お前‥ーー」

構えた剣を下げ
双眸を丸くと見開いて佇む最中、正直サスケは酷く戸惑っていた。

顔の形はナルトその物と変わらずであったが、
鮮血を浴びた半身の肌晒す全容
金糸上に縦伸びた三角型の獣耳

わらわらと各々に蠢く九つの鋭い尾

瞳色は紅く
横に伸びた瞳孔は
山羊や羊や蛙のようだが眼差しは柔く優しく。

皮膚を突き破り体の彼方此方から長く伸び地摺る細い管は紅色の液体を循環させて。

片手には額当てだろうか?
洞窟なら漏れる光に反射する鐘板が褪せた紺色の布地を明るめの色合いに仕上げている。

半妖と化した姿は禍々しくはあったが穏やかで安らいだ雰囲気と表情は以前のナルトよりも何故か“人間”らしく思えて仕方ないとサスケは憂いに満ちたかな瞳を細めていた。



「‥サスケー…」


失った記憶は己にとって辛かった事のみ、それはサイが望んで蘇らせてくれたからこそ。
散々奥深くと閉ざして信じた道を進んできた分、純粋に露わになりサスケへ想いを告げたくと揺らぎ歩くナルトはサスケを認識し近寄っていたのだった。


「…すき‥サスケ…‥大き…」

懐くように鳴らす声、無防備にと広げる両の手の片方は拳作ったまま。

ザッと地を踏みしめて臨戦態勢を取り剣を翳すが、ひたりひたりとふらつきつつ、名を愛おしみて呼び続ける満面の笑みには殺気など毛頭無く。
明白な想いだけを綴るナルトはサスケの差し向けた刃など関係なしにとサスケへ抱き付こうとサスケの肩口へと手を伸ばした。
その刹那、鋭利がナルトの腹に突き刺さる。

その衝撃的な映像がサスケの紋様絡まる瞳孔にハッキリと照らされた。


「…サス‥ケーー…これぇ…」

にこやかな
笑みが一段と暖かみを帯び、傷の付いた額当てが翳される中、自ら剣を腹孔に納めて行く。赤温いナルトの液体がポタポタと地に点在する。
恐らく痛みや恐怖は感じないのだろう。
死と云うものさえも解らないのだろう。

脅えるものも一切ないからこその無垢なる面持ちはニコニコと笑うだけ。


「…サスケ…の……」

「お前のはどうした?」


「…サスケ…の…好きーー‥」


こんな姿になってまで後生大事と掴んで離さずだったのはサスケを必ず連れ戻すと言い切り、それを一番の望みとしていたからと伝えるように微笑み、剣を抜こうとするサスケの手首へ一つ、後尾を伸ばし巻きつかせ強い力で背中へと貫いて碧色の瞳へと色を変えた。

そしてサスケの額に布地を巻きつけたキュッと結んでビードロ玉に似た瞳から一筋の雫を零した。


「‥好き…、サスケ…‥ーー大好き…‥


「……ナルト‥」

サスケは手首を巻き締めるナルトの尾に雷鳴を走らせ千切り、即座にナルト抱き締めた。


強く強く…



もう傷つけないと約束するように。




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あきゅろす。
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