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よどみ舞ゑ…


最も危険とされ幽閉された山林の奥深きに岩戸で閉ざされた洞窟あり。


更に洞窟内の最奥部には聖水湧く泉があり巨大な祠が存在すると云う。


まるで御伽噺とした伝来を携えし場処。

そんな場所が本当に実在しているのか、実は明らかにされては居なかった。

而して
迷う事なく…逆に何かに導かれるかに辿り着いたのは不思議ではあったが、疑いもせず其の場所は存在すると只管信じ抜いた己の意志と腕内で眠る愛しき者への愛情が天に届いたからだとサイは一人納得して地に足着ける。

目前の岩戸を得意の忍術で破壊し、洞内へ踏み入れ進み鍾乳の深き場内へと。


最深と思わす大きな鍾乳石垂れる高い天井、先行く門を閉ざす封印の注連縄と札纏う漆喰なる場まで漸く到達すると封印の紙札を丁寧に剥がして代わりに打破の札を貼り、目蓋を閉ざして片手で印組み術式を怯まずな一念で唱えた。


崩れ落ちた漆喰の壁より現れた向こう側には透明度高い湧水が洞内を温暖とさせ、サイを阻むかに疎らと鋭い鍾乳の氷柱が爪先付近の地へと落ちて来た。

「!!??」

その際(きわ)
サイは咄嗟にナルトの亡骸を守り被さり抱いていた。


『…‥御主、己命は惜しく無いのか…?』


何処からかは解らないが酷く低音なる声が響き渡る。


「ボクは唯…これ以上ナルトを傷付けたくないだけです。」
神妙なる口調で答えたのは、姿は見えぬが声主が己の願いを叶えてくれる唯一の者と判断した故。


『そうか。ならば
其の泉至近に在る祠穴に其の死者を納めよ』

サイの意を見抜いたとした声に従い動かぬナルトを抱き上げ直して、侭に歩き。氷柱が衝立となって出来た様な祠へと空間を進めば仄か春めいて暖かく。なのに高い天井の鍾乳は溶ける様子がない。
理不尽とした場所から伝説は本当だと強く理念を噛み締め、ナルトの亡骸をゆっくりと労る仕種で祠に納めた。


『此は道理に反する行為にて祈者の半生を要するが良いか?』

「…はい。」


『もしも貴様の祈願よりも此の死者の残想の念やらが強靭で在らば失せし物も多いが…、其れでも良いのか?』

「はい」


『譬(たと)え歴史が変わろうと御主に一切の見返りは無かろうと構わぬと申すか?』

「はい。…ーーナルトが心から一瞬でも笑ってくれたなら…、幸せを感じてくれたら…ーーそれだけが望みと蘇生を願います。」

凛然とした瞳を掲げ、澄んだ声音で惑いの無い志を表した。

寸時の間を持ち了承したとの響きと共に
地から天井からと氷柱の衝立が伸び行き、円形を描き始めた。

『さあ、祈るが良い。此の者の甦りをーー…』


頭を擡げ天に捧ぐ様子で目蓋を閉ざして両の掌を重ね指組み合わせてサイは祈った。


此の空間が変動し、振動を伴おうが微動もせず、ひたすら真っ向に祈り続けた。


どれ程
時を要しただろう。

静寂と化した環境下で緩慢に瞳を開くと湧泉は枯れ、繭玉のような糸引く巨大な卵型が目前に聳え立っていた。

「……ーー」


神々しい景色と温暖な空気はサイを期待を高めた。



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あきゅろす。
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