それぞれの道※サイ
図書室で本を読み耽っているとふと不安が過ぎり、字面から眼を逸らし穏やかな空の色へと視線をむけていた。
すると
終末の谷の方面から閃光のような一矢が空へと駆け昇るのが眼留まり。瞬時に悪寒が背筋を走り、静観を保たなければならない場所で大きく椅子を引き倒して立ち上がる。
「どうしたのよ。急に…、ちょっとサイ!」
サクラの呼びかけに答える間さえ惜しく、図書館を慌ただしく飛び出し疾走していた。
何だろう…?
物凄く嫌な予感がする。
「!!?」
ボクの予感は
目的の地に辿り着く少し前に的中してしまった…
水流に浮かぶ橙色の布地…
水面を揺らぐ金糸
「ナル…ト…?」
名を呼ぶ唇が震えていた。
川中を渡る足先ばかりが急ぎ飛沫をあげていた。
逸速くと抱きかかえ、川面から上がり救出へと勤しんだけれど…‥ーー
もう
既に手遅れだった。
多分、さっきの光は宿主を失った尾獸魂だったのだろうか?
それとも
ナルトの…ーー
どっちにしても
哀しい事実に変わりはなかった。
「どう、して?…‥ナル――‥」
冷たく濡れた傷だらけのナルトを強く強くと抱き締め、止まらない涙で血色通わずな線ある頬を一層と雫を流していた。
傷の具合からして何者かと争ったのち川へ落ち致命となったのか、崖上から身を投げて‥か。ナルトが争って負ける事は先ずないと安易に考えられる事から自ら命を絶ったと認識するしかないだろう。
キミが死を選択した理由が解らない…
「…ボクに、もう一度…人を信じてみようと…、そうボクに欠落していた過去に置き去りにする事で守ってきた大切な物を再びと甦らせて感情を与えてくれたのは…他でもない、キミなんだっ…ナルト!」
硬直化した掌は固くと、サスケの物だと解る布地を握り込み、離さないキミの眠る姿態を抱き叫ぶ。
キミの名を谷山に谺させる。
ナルト…
ナルト…
…ナルト
そう言えば
根の長と疎通がある水影が言ってたっけ。
『器の精神が崩壊し九尾が闇に堕ちて破壊神と化す時こそが我等の幕開けだ。』と。
理由も無しに自ら生命を閉ざしたのは、堪えられなくなったからなんだ。
ナルトが志していたものが何かの切欠で崩れ破綻した。
それで招く最悪な事態を避けるため、キミは九尾を天に返して空となった。
「そう、か…
これがナルト、キミの究極の愛…ーー」
次なる世に
未来に
キミは託した
もうキミは縛られる事なく自由の身となったんだね?
「それなら良かったよ…。」
無理に安堵して息を吐いたのは哀しみから逃れたかっただけ。
ボクが前に進むために…
生物を蘇生させる祠があるとの情報を以前、暗部のある任務をしていた時に耳にした事を思い出す。
現在は背徳なる場所として封印されたらしい。
場所は確か木ノ葉の里外れにーー…
何もしないよりはマシ…と言うより、遥かに期待をして巻物に筆を走らせ術式を施し、ナルトを抱きかかえ絵から現れた大きな禽獣の背上へ飛び乗って己の記憶を頼りに低空を舞い、祠を目指した。
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