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戒律


古来より戦乱絶えず……


常に自欲のままと人々は競い争う事を止めず。何かを創造しては破壊を繰り返して知恵と力を取り入れた。


そんな世を遺憾してか天空は雷を放ち、大地は激しく揺れ隆起して地形の変革を遂げ。一度は荒れくれた世界と化す。

それでも“人”は争いを続け、悪しき出来事は密かに此の世に住まう魔物の所為と架空なる生物を想定し、正しき者は己の信じる神仏のみと目には見えざるものを産み出して強者は弱者を支配した。



そしてある日
驚愕する出来事が起こる‥…




実在する筈のない魔物は幻覚なのか?

果たして
本当に創世の神仏が存在し此等を地に見舞わせたのか?


それは実証するにも不可能であったが、尾獸と呼ばれる“人”と“動物”を融合した巨大な者が現れ、更に世界を混沌とさせたと云う‥…。


此の尾獸なる者、尾の数が増殖すればする程に絶大なる力有りき。総ては表裏一体と九つの想念たる愛しみを教えとして地に舞い降りた巨体は当初反転して殺戮を好み、破壊を以て世人を懲らしめ象徴をした。

一尾は“自愛”
二尾は“愛護”
三尾は“信愛”
四尾は“敬愛”
五尾は“愛慕”
六尾は“愛好”
七尾は“愛着”
八尾は“愛唱”
九尾は“慈愛”を…


激甚な天変や地変を招いても根本的に此の世界や人類が滅びなかったのは、各地に君臨した尾獸の本意を心得た民達が慢心を捨て見返りなどは求めずに過ちを悔い改め、世の平和を心から願い、命尊しとの敬いを天に祈り捧げたからだとされる。

特に最大なる力を保有する九尾は最高位の神仏を著す化身と謳われた。
その経緯は己の利益を計る慢心な強者達には悪しき破壊力で戒めその魂達を地獄へ堕とし、好転しては平和を願い平等を求める民達を変革より造られた新地へと聖なる力で導きて、統合を示すかに尾獸達を従え訓戒を表し、戦乱を鎮静した事からだと云う。

後、尾獸達は己が半魂を澱みのない魂を最も人間に宿し、此の者を器として後世を見届けると帰すべき天界へと閃光を昇らせ『再び世が乱れ戦が蔓延する時、幾重を連ねて魂を宿し者の体内から我等は蘇る。』と言い渡した。

そして九尾だけは器に宿らず、最も信念と誇り高き正義感を持つとある一族に、人類を滅亡から防ぐべきと術力を授けたのだった。


『忌まわしきとされる紅の瞳、此れは戒律であり業(カルマ)であると心せよ。決して優越に浸る事なく平穏無事な世作りに貢献すべしと励め。然すれば後、業は消失し極楽へと誘おう。』

神仏に近しくとした永劫を褒美に枷を与えたのは遠き未来を予測しそして…ーー

『若しも儂が世を据え施す為と半魂を器に宿し現れるだろう。其の時より少前に救世主なる存在を一族内に生誕させ其の者のみ完璧に儂を操り託すとしよう…』



此の訓辞から他の者も我等と貢献すると“忍”を結成し世を建て直す運びとなった。

それから、かなりの時が経ち暫くは平穏無事が続き、文明も信じられない早さで発展していく。


勿論
善があれば悪もあったが“九つの愛”が誰しもの根底にはあり、無益な大乱はなく。“器”を祀る形で不自由ない平等に近い時勢が保たれた。



然し
なかなか現れない救世主は戦時が失せたからだと思想を持つ輩が一族に現れ、ついには『己が救世主なのだ』と血分けた弟の開眼なる紅き瞳を強奪し世を欺く行動を試みた。

此の男
何故か人々を惹きつける要素有り。強靭な人材を集め
“器”を集めるようと準備段取りを始めた頃合い、救世主を予期させる者が生誕し五年後に救世主かと思われる赤子が誕生する。

その2ヶ月と17日後、頬に九尾の印を刻む赤子が生誕した。


常に長に従い正義で悪を捕らえては改心させとした一族に叛乱が起こった。


残りた末裔は事の起こりを伝えられずに成長し、真実を極める為と里を裏切り愛しき者から遠ざかった。


人類の命運は二人に少年に託されている事を当の本人は知らずと時は流れたのだった。

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