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side A NARUTO


六十年に一度


接近するという彗星
は此の地に六つの災いをもたらすと謳われる。


戦乱絶えぬ
地平線の遥か彼方に


その大きな星が通り過ぎた時



真っ暗な
湖に星光が照り返したのを

真っ暗な桟橋に
座るアイツの背中の
もっと後の土手上で
眺めてたっけ…



ひとつだけの願いを
知らずな内に込めながら‥…














side A Naruto






アイツが
木ノ葉の里にある湖に
姿を現したのは例の事件があってから。



優秀なアイツ。
あまりに遠い存在に思え、容易く声をかけられずにいた。


いや‥───
掛けちゃイケナイ気がしていた、と言った方が正しいかも。



しかし
疎通するものがありと、たったひとつの接点だけを頼りに
いつか
その背中を追い越してやると心に誓っていた。






それから月日は流れ

同じ時を過ごし、


やっと
分かち合えたと言う時に‥‥


アイツは此の里から姿を消した。





力の求め方が
間違っていると促し里に止どめたいとした裏側で

諦めずにいたのは…


アイツの孤独を救えるのは手前しかいないと、手前しか出来ないと……


ただ、
アイツの
近くに居たい――‥
と言う単純な理由を否定するために
こじつけていただけだったと



60年という長き歳月を経て漸く気がついた。





「七代目火影様、今夜は特に冷え込むのですから
今時分からの外出は控えた方が…… 」


「いや、大丈夫。
お前の心配には及ばない。
今夜は如何しても行かなきゃならねェ大切な用事があっから…」


「御身体に障りますし、それに何かあると困りますので御一人で外出するのは御辞めになって頂きたい。」


「馬鹿にするな。
まだ、そんなに老いぼれてちゃねぇよ。」


「そういった所、昔から変わってないわね。いいわ、貴方は下がってて私がついて行くから。」

仕方無しと了承する
若い側近。

見た目は五代目火影を彷彿させるほどに
若い姿のサクラちゃんも
オレと同じ年齢……。



サクラちゃんに未だ
片思いなんて
どっかのエロ仙人と一緒だ。
そんな事を思い起こして五代目火影と
六代目火影となった恩師
次にオレの顔が彫られた岩へと火影室を出た外廊下から眺める。


「なあ‥サスケ。オレは立派じゃねぇが火影になれたぜ…」

漏らした顔の窺えないアイツへと囁き――‥


それから幾重にも刻まれた皺くちゃな掌を
見詰める。



結局
里に戻らなかった
アイツ……


風の噂すら耳に流れては来ないアイツを
最後に見たのは


手前を信じてアイツを信じて
真っ直ぐにアイツだけを追いかけてた…
あの時代の

波紋を呼んだ組織の野望を打ち砕いた
あの日――‥。






それ以来だった…







「一体、アンタ何処に行くつもり?」


背後からの声に顔を振り向かせニッと笑う
オレの髪は金色に銀色が多くと加わり

顔は、掌よりも
きっと皺が刻まれているだろう。

「残念だけど…サクラちゃんにも言えない、かな。」

「いい加減やめてよね。『ちゃん』つけするのは…」

「いーじゃんか、サクラちゃんはオレにとっちゃあ‥いつまでもあの時のままの『サクラちゃん』なんだから…。」

「まったく…。ナルト、アンタもこんな歳になっても変わらないなんて‥…」

溜息交えたサクラちゃんは、呆れたのか意を察したのか‥――

どっちなのかは
オレには判らないけど、その場に佇み
七代目火影の文字が小さくなるまで
其処を離れなかったらしい。




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