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偲ぶれど…※イタチ


Back yard





「どうやら仕組んだ
シナリオは無駄になってしまったな…」


自来也の姿が消えた後
埋葬された場を
見下すように現れた
人影が二つ……




時空間忍術を究め、現在・過去・未来へと行き渡っては、己の理想郷を創るべき夢を見る者達。


それぞれに持つ
鋭い紋様の紅い瞳を覗かせては野望を抱く…――






「しかし収穫は幾つか得た。」
腕を組み何かを思案する木ノ葉の創設者を傍らに、弟と想いを育んだ……本来ならば、確りと護らねばならない獣を宿した者の亡骸埋まる場を眼下に入れる。



「先ずは時が読めた…。再び過去へと帰された器…四代目の遺産が16の歳になる迄
…――集めた尾獣の最後に陽とされた九尾を餌に、陰なる側の九尾を合わせ完全なる妖弧……、否…獣神に奉り、うちは本来の力を呼び覚ます。」


守護する側として
うちはマダラが手に入れた、言わば呪縛の紋様…

最強と謳われた
此の血脈の由来……



「それまでに
神の使者となる輩を集めた組織を確立させなければならない…。
忍の存在に疑問を持ち、生まれた時から指定されし印なる境を不服とする者達…――。
イタチ、お前の様に
そして俺の様に…
己の力を小さな器に止どめられずとした
新しい忍の歴史を求めようとする者……――。」


其れを神の啓示だ。
新たな創造の為だ。

とマダラは説くが、崩壊には変わり無い…。

滅びては産まれゆくのが全ての運命であるとしとも…だ。



「その点では、惜しかったな……
九尾の小僧とサスケは…――」

刺さる様な視線に
野次られる事を想定して俺は口を閉ざした侭…――


逆なるマダラは良く喋る男だ……


「うまく行けば導けたものの何故あの場面で助けては、やらなかったのだ?」
マダラの問いに
瞬きをして一拍を置く…――
野暮な事は訊くなとの言の葉を飲み込む。

「………オレが姿を現した処で如何にもならないと感じたからです…。そう思ったのならアナタこそ何故?と逆に俺は問いたい…」
マダラには目を向けずに愚問を放つ。


すると無碍だと息を吐き出してからオレを下すマダラが不意に視界を遮った。
「面識の無い者が飛び出し恩を売るというシナリオがなかったから、敢えてと言った所以。…まあ…――良い。未来は幾らでも変えられる。歯車一つで……」

行く末を変えると安易に答えるマダラには些か堪えられず、揶揄めかしてフと嗤い。
「…ならば今から変えてみますか?」
と推し量る。秘めた想いを馳せて…―――

「其の必要はない。厄介を重ねるより…
過去に伝達する方が有意義だ。
それより話を続けよう。」
「……――。」

過去が変われば未来も変わる。意義など無数にあるだろう…。それを厄介と払うのは如何かとも思うも、納得せざるを得ない。オレの身もマダラの身にも“限り”があるからだ…。

「次なる点、…世界が移っても九尾が完全に消失しない限り、力は失せる事は無い。その証が未だ宿る、此の眼だ…」

親指を己の眼光に向けるマダラを一瞥し、確かに…と頷く。


「だがしかし…
本当のうちはの力は
此の世界には宿らない。それは陽の九尾が
此処には存在しないからとみた。」

簡潔に告げれば良いものを…

マダラは常に回りくどい言い方をする。


「…必要の無い世界…――か。」
オレがそう呟きを漏らした折、
突風が葉を揺らし…
樹々をざわめかせた。

季節柄か小さな螺旋作るつむじ風が、魂の無い二つの器が埋まる土塵から生まれ、枯れ草を揺がせた。



其の偶然的に
出来た逆巻く風の音が

まるで

此の世界に確かに
己達は存在したんだ

との……
土中に重なり埋まる
二人の叫声の様な気がした…。


…こんな情感を得るなんて、
全く持って
らしく無い…と
己を嘲り笑う



「さて二人に餞でもして…、行くとするか。」


此の男が線香など上げる気がある訳が無い。

自来也様が建てた
二人の墓を踏みにじる
のが関の山だろう……


「…そんな余興を施す時間さえ、アナタの話を聞いてたら
惜しくなりましたよ…。」



「ほう…、実の弟に餞する時間すら無用と言う訳か…――。
相変わらず冷たい奴だな、イタチ。
…まあ、其処も御前の良い処……。
では、先を急ぐとしよう‥」

唯一無二の弟と共に無垢な愛を最期まで遂げた者が眠る場をマダラなんかに荒らされたくはなく…と刻んだ言の葉が、どうやら功を奏したようだ。






マダラの消えた姿を確認し



下らない世だったと
此の世界を懸念しつつ
瞼を閉ざす…―――




小動物が墓土に埋めた種へと念を込め、紋様刻む紅の双眸を向ける……

(僅かな欠片でも九尾のチャクラが此の墓地に根付き宿っているならば、この眸の力で操れるだろう…)





せめてもの餞に……


季節外れの
黄彩る花を一輪……――





此の滅びた
二度と訪れる事は無い里に咲かせて…――






直ぐさまマダラの後を追い
…次なる違う世界へと急ぐ。




虐げ、罵り、排他をしては嘲り嗤う…そんな世界の時空間を迷走する。





願わくば……

愛しい者達が平穏で過ごせるよう…――
小さくても幸せを感じられるよう…――









未だオレの夢迷は果たせず…――。
視界を閉ざし如何なものかと己内にて嘆き咽ぶ。




貪欲な世界の何処かで
紅蓮の驟雨が濯がれる。

まるで
何時もの事だ…と
鳴く鳥のように…――。




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あきゅろす。
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