[携帯モード] [URL送信]

素直になれなくて※サス誕みそっかすより


オレ、うずまきナルトは今日も元気よくラーメン一楽で日本一のラーメン職人目指して修行に励んでる。

スカした常連にも負けずに笑顔でサービスを心がけながら。
「いらっしゃいッ……ませー。」

ゲゲ、やっぱ今日も来やがったか…ってアレ?
アイツの腕にしがみついてるアレってば、もしかしてもしかすっと…

「サ、サクラちゃん!!」

「あら、ナルトじゃない。相変わらず元気そうね。」

なんでサクラちゃんがコイツと…

「いらっしゃいませ、サクラちゃん!
サクラちゃんすげーキレイになっちまったな!!」

「んもう、ナルトったら昔と変わらず正直なんだからァ。」

「へへっ。」


勝手にテーブル席に着いたアイツにはドンと冷えた水を置き、サクラちゃんには心からニィと笑って丁寧に水を置く。

「いつものだ。」

「ヘイヘイ、醤油かた茹でをひとつっと…」

「私もサスケくんと同じのをひとつ。それと生ビールを二つお願いするわ。」

「醤油かた茹で二丁、生二丁お願いしますってば!!」

「はいよー!」

房に入って生ビールを二つ注ぎ、お通しの生ザーサイのお新香を用意してテーブルに運ぶ。

「こちらお通しになりまーす!」

「へぇ珍しいわね。生のザーサイなんて…」

「オレは苦手だけど評判いいからオススメだってばよ。」

アイツにはドンと泡を零して置き、サクラちゃんにはソッと丁寧に。

「じゃあサスケくんのお誕生日を祝して乾杯しましょ。」

へぇ、アイツ今日が誕生日なんだ?

いや、そんなコトよか何でサクラちゃんがアイツの誕生日にアイツと一緒なんだ?
で、何で誕生日にラーメンなんだろ?

フツーは、お洒落な洋食屋とかで…なんじゃねーか?

「あのさ、サクラちゃん…」


「オイ、油うってんな。一番さんの餃子と味噌ラーメンあがったぞ!」

「へーい!ただいま〜」

仕事をしながら耳を傾ける。
アイツなんかどーでもいいけど、オレの初恋だったサクラちゃんが何でコイツと一緒にいるのかが知りたくて。

「偶然とは言え、サスケくんと一緒の会社に勤められて良かったわ。」

ふーん、そうなんだ。へー……。

アイツとサクラちゃんはどうやら一流企業勤めをしていてサスケは新入社員なのに優秀で早くも将来を期待されてるらしい。サクラちゃんは同じ部署のOLさんで何だかサスケに片思いっぽい。
今日はサスケを待ち伏せして無理くりついてきたとか…。誕生日プレゼントを贈りたくてと一緒に祝いたくて…。

「三番テーブル、あがったぞ。」

「へーい!」

そっか、サクラちゃんはサスケが好きなんか。
サスケはどうなんだろ?
サクラちゃん可愛いから、あんなにスカしててもやっぱサクラちゃんを…ーーなんかな?

「かた茹で醤油、お待たせしましたー。」

せめてラーメンだけは静かに置いてやっか。

「美味しそう。いただきまーす。」

サクラちゃんはニコニコしてうまそうにラーメンを啜っていたのに対して、アイツと来たらいつもの仏頂面。
こーんな可愛い子ちゃんが健気に誕生日を祝ってくれてんだ!お洒落でも何でもねー、こんなラーメン屋なんかでよ!
ちったァ愛想よくしろってんだ!!

「ごっそうさん。」
「え?」

「あ…、待ってサスケくん!」

あの野郎と来たら、金をテーブルの上に置いてサッサと暖簾をくぐりやがった!

「待てよ、てめー!サクラちゃんがまだ…」

「もういいわ、ナルト。サスケくんこれから接待らしくて忙しいのに私が無理にだったし…だから今日はもう…。」

「サクラちゃん…」
「ここのラーメン、本当に美味しいわね。サスケくんがイタリアンよりこの店に来た理由がわかったわ。」

笑顔でラーメンを食べるサクラちゃんがいたたまれない。

「あの野郎、今度来たらただじゃおかねーかんな。」

「いいのよ。サスケくんとデート出来ただけで満足だしプレゼントのお礼も聞けたし。ナルト、アンタにも会えたしね。それに私が奢るつもりだったのに逆にご馳走して貰っちゃって悪い事しちゃったし。だからサスケくんを悪く思わないで、ね?」

「うん。サクラちゃんがそういうなら…。」

「じゃあご馳走さま、また来るわ。」

「おう!今度はオレがサクラちゃんにラーメン奢るってばよ、餃子のサービスつきで!」

「ありがとう、ナルト。」

「ありがとう御座いましたァー!!帰りは気ィつけてなァ!」

暖簾の下でサクラちゃんの姿が見えなくなるまで手を振った。元気だして頑張れってなエールを心ん中で送りながら。

その後、閉店まで仕事をしてコンビニに寄ろうとした時、閉店間際のケーキ屋が目に飛び込んだ。

アイツ、ケーキでなんて祝って貰ってねーよな。サクラちゃんが接待だって言ってたし…。
常連さんにはサービスしとかなきゃな。店じゃなーんもだったしな!

アイツに出費なんて辛ぇトコだけど、サービスの一貫として投資してやっか。
アイツんちは特別サービスで出前に行ったコトあっからわかっしな。

「すみませーん!苺のショートケーキひとつ下さいなってばよ!誕生日なんでロウソクも一緒にィ〜!」

「おや、ナルトくんじゃないか。なんだい彼女の誕生日かい?」

「なーんだ、オッチャンの店だったんか。いや、そんなんじゃねーってば。ホラあのスカし野郎の誕生日でさ、そんで…」

「ああ、あのイケメンの友達かい。じゃあ常連同士ってコトで俺からもサービスしとくよ。」

オッチャンはそう言って苺のショートケーキやタルトやら生クリームたっぷりで甘さたっぷりのケーキを箱いっぱいに詰め込んでくれた。

「へへ、サンキュー!」

「いいって、売れ残ったモンで悪いな。」

三百円でこんなに沢山のケーキを買えたなんて、オレってばラッキー!!
持つべきモンはやっぱ商店街の常連さんっだな!

上機嫌でサスケんちまで走ってった。
夜んなっていくらか涼しくはなったけどまだ暑ィし、生モンだから急がねーとって。

「おーい、開けろォ!宅配だってばよ!!」

ピンポン、ピンポーン、ピンポーンってしつこくチャイム鳴らして、勧誘とか集金とかじゃねーから居留守は使うなってニュアンスで声かけて、ドアを叩いたけどシーンとしたまんま。「開けェーゴマ!!」ってな呪文もききやしねェ。

アイツ…まだ接待してるんかな?

「しよーがねェ、しばらく大人しく待ってやっか。」

玄関の前に座ってアイツを待つ。

時計をチラチラ見ながら、まだかなってマンションの廊下に目を這わせて。

「だあァー!!もう11時過ぎてんじゃんよ!」

何やってんだ…、あのバカ。

2時間以上も放置されたケーキとオレ。

「もういい!!誕生日過ぎたケーキを一人寂しく食いやがれってんだ!」

心配をよそに怒りが沸騰し、半分以上ケーキを食いまくる。

「うめー!!疲れた時の甘ェモンは最高だってばよ!」

サスケ、サンキュー。今日お前が誕生日じゃなかったら300円でこんなにケーキ食えなかったかんな。
うめーモンは人を幸せにしてくれるってのはマジだぜ。

「あー、うまかった。さーてそろそろ帰っかな。喉渇いたしな!」

残ったケーキ達にロウソクをブスブス挿して、食い散らかしたケーキの箱にボールペンで“誕生日のケーキ買ってやったってばよ。有り難く一人で全部食いやがれ!バーカ”とハピバなメッセージを書き残し、玄関の前に置いときゃバカでもわかんだろって、ドアノブにケーキの箱が入った袋をぶら下げて、トットとその場を退散した。



次の日
アイツはいつも通りにやって来て、いつもの三番テーブルに勝手に座りこんだ。
「昨日は悪かったな。」

「ちゃーんと誕生日の日に食えたんか?」

「ああ、何とかな。」

差し出した水で胃薬を飲むアイツ。昨夜の接待で二日酔いなんかな?
顔色もよかねーし。

「サッパリした冷やし中華とかにすっか?」

「いや、いつものでいい…」

厨房からアイツを覗くと調子悪そうに溜め息ばっか吐いてた。接待、うまく行かなかったんか?
それともサクラちゃんにフラレたとか…。後者だったらザマーミロなんだけど!ニッシシ…

「はい、いつものお待ちィー!!」

ズルズルとラーメンを食い、終わると勘定だとオレを呼びつけた。

「なあ、ケーキどうだった?全部食ったか?うまかっただろ?」

「…今度からケーキは勘弁してくれ。甘いモンは苦手でな。」

何だコイツ。
今度から…って、また何か貰えるとでも思ってんのか?
ふざけんな!
過剰なサービスはコレっきりだかんな!
やっぱ、やっぱ…コイツってば…

「ムカつくってばよオオオオォーー!!」

アイツの図々しさやふてぶてしさにアッタマきて、ぶん殴ろうと振りかぶったオレを「コラ!」と窘め、後ろから羽交い締めて止めるテウチのオッチャン。

「フン」と背を向けて暖簾をくぐるアイツ。

笑う常連さんたち。

毎度お馴染みの一楽の風景が広がる。



ムカムカしながらアイツが占領してたテーブルを片してるとアイツの名刺が置いてあって、裏側に“ありがとう”とらしくない文字が記されてて、何だか自然と口元が緩んじまったのが、いつもとは違ってたんだけど、それはオレだけの秘密ってコトにしとくってばよ。



おしまい





あきゅろす。
無料HPエムペ!