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空漠



一面の地は何処も彼処(かしこ)も真綿に帯びて…ーー


伏せたわる横に出来たのは紅の道筋。
見上げた空は灰霞み、舞い降るは軽々とした冷たい淡麗な結晶。ふわりふわりと其れなる物が身に落ちて。流れる紅の温かさに溶けては徐々に風穴をも隠すように積もりて溶ける。


それでも溢れ出でること今は止まずと、積雪の地に滲み延び行く朱液は、其の色を白へとじわりじわりと染み渡る…――

麻痺する感覚。
何時しか冷たく柔い飛礫の山が暖かいとまで錯覚する始末。こうした状況で微かに動きみせた掌を広げやる。

真綿色の大地に散らした金糸は吹雪く風任せに靡き。薄れる意識の淵でいっそ侭に‥と願う己が掠み通る。


澄んだ空気と澱む意識が交錯する最中、遠くからサクサクと歩を刻む音が聞こえてきた……――。

けれども判定をつける能力すら己には無きと重く閉じ行く瞼の侭に、悴む身体を放りて遠くへと向かう自律なる反射すら朦朧となる。




自然と塞がれゆく腹孔、白を溶かした紅水を補う忌まわしき身体は内に潜む者の計らいで恐らくは、また甦るのだろうか。


此が幸か不幸か、
考える余地すら到底残されては居らず‥…ーー


思考さえ麻痺して、術無くと身埋もれ堕ちる。


そんなナルトの身が持ち上がった刹那、誰の助けかはいざ知れず。しかし、何処か懐かしさに触れた気がしたのが不思議であった…。









流離う意識は鮮明となりつ、閉ざした細縁を緩り開けば、春の陽射しが瞳孔を遮り。

人の気配に視界を傾けてみれば、桜色の髪をした少女が傍らでうつらうつらと伏せ入っており。

声かける事なく、ゆっくりと伸ばした掌を桜色の糸地へと一度のみ滑り落として、己の能力を使い果たしたのであろう少女には言葉ならずな感謝を捧げた。


そうしてから、金糸を散り重ねた布地に混ざった一糸の黒が、ふと目について。
まさか‥との余念に支配される。


「…そんなワケねーよな。」

敵対となっているかも知れない、そんな親友の思い出を彷彿させて、若干長めの黒糸を摘み持ち、雪解けた景色を眺め。

「必ず、オレが…」
と刻みた口許は緩やかな上弦を描いていたと謂う。







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