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Breeze





里を抜け出たサスケの行方を知ったのは清流の流れ落ちる滝が流れる場所だった。


ナルトは
暗い瞳の影がある
この少年に前々から惹かれながらに現在も遠くから唯見つめる事しか出来ずにいた。


過去の関連と関係から……。


声を掛けたいが人を寄せ付けない彼の雰囲気に加え、自分の立場を知らせてしまったらまた遠くに行ってしまうのではないか…
との不安を掲げ、彼の端正な顔立ちを眺めつつ戸惑いを感じ、幾日もの日々を過ごす。



そんなのナルトの視線を誰のものかは解らずとしてサスケは密かに背後から、いつもそれを感じていた。

だが、殺気がないことも相俟り、その得体知れずな視線に声を掛ける余裕もなくと、只管がむしゃらにより強さを求め己を高める為と修行に勤しむ日々を送っていたのだった。



『今は誰とも接したくは無い…』


滲み出る思いが余計にその目を遠ざけていた。




一方
ナルトはサスケの姿を見ているだけで満足していた。


毎朝
サスケの姿を見るだけで今日も元気で良かったと思うだけで凄く心が安らいでいたのだった。



過ぎ行く日々の最中
サスケも顔は見えないが、何処からか感じるいつもの暖かい眼差しに何時からか安心するものを感じ取っていたのである。


お互いに何故かは理解出来ないが、言葉を交わす事なくとして、安堵感にも似た
そんな想いを胸に潜ませていた。



サスケは感じる視線が男か女かも未だ解ってはいない…


ナルトは正体を明かす事を怖れ、ただ心の中で「サスケ」と何度も名を呼び姿を見る度、安らぎを宿した。

サスケはそんな事には全然気付かず今日も独り修行に勤しむ。


新しい自分を
更に磨く為に…


全てを捨てて挑んだ己の野望を打ち遂げる為に…



そうして
修行ばかりしている
サスケ。

時折
淋しそうに儚げな眼差しで朝日を見上げる。



ナルトはそんなサスケの様子を胸が締め付けられる思いで見つめていた。


「…イタチ、何故だ」

零れる言の葉。
サスケに取ってイタチは野望の対象。
この男が、もし一族惨殺という悲劇を起こさなければサスケは里を抜けずに安穏とした日々を己と共に過ごしていたのだろうか。

詳細の知れずな内情ふとナルトの脳裏を掠め瞳の色を濁す。

「必ずアンタを殺してやる…!」


殺気立つサスケの句からイタチへの嫌悪感が更にわき上がる。



でも
自分は何も出来ない、出来なかった。


今も唯、こうして見つめているだけ…


やはり
声を掛けたい

もっと彼に近づきたい


途轍もなく思いは溢れるけれど出来ない、そんな力不足な自分を情けないと頻りに追い詰め掌を握るナルト。


『サスケに見合うようになりたい』


気持ちだけが先行する。


『オレも強くならなきゃ…。』


いつからか怖れをなしてしまったのだろう。

失ってから気がつき芽生えた弱さ。


せめて伝える勇気をと葛藤しつつも一生懸命自分に言い聞かせサスケの背後に少しずつ歩み寄る。






振り返るサスケと視線が合った。



高鳴る心臓を沈めながら唇を開け小さな声で語りかける。



「……サスケ。」


激しく打ちつける滝音で聞こえなかったのか。

サスケは素通りして修行の場とする滝壺へと足を進ませた。



ナルトは少し寂しかったが今日はサスケと目が合ったし何より自分に勇気を持てた事が嬉しくて顔を弛めた。


『明日はもう少し彼に近づきたい…』

今日は、これまでと踏ん切りをつけ、
明日もまたこの場所でサスケに会える事を楽しみにし彼とは程遠い距離にある岩に腰を卸す。




『少しでもサスケの力になりたい』


そう
サスケの事を思い浮かべ自分に出来る事を考え、時を過ごし明日へと担う。


過ぎる時の中、このように『明日こそは…』と秘めつつ、色々なサスケの目にしていたのだった。


サスケの胸の奥に宿る暗闇は自分で全て晴らす事は出来ないが里の仲間の期待を胸に自分を奮い起こす。


しかし
それより何よりサスケを間近で見れるようになった事がナルトに取って大きな進歩で。



『サスケと目が合う』


『サスケがこんなに近くにいる』


『自分を避けずに…』


それだけで幸せを感じていた為か、こんなに傍にいるのにサスケに何も話しかけられず
唯、微笑んでサスケを見る日々をナルトは選び今日もまた過ごしていた。





サスケも声をかけようとはせず、視線だけを時々あわせているのみで修行に明け暮れる。

昨日よりも今日は明日はと、より内容をハードな物にして。

明くる朝の日、
後ろに片腕を回した状態その儘を縄縛りにし、谷を片腕のみで這い上がるサスケがいた。

片腕に強いられる己の体重の重みを苦痛に感じながら、登り上がる。


それを
下場に在る滝側から心配そうな表情で見上げるナルト。


『サスケ‥…』


心内で彼の名を呼んだ時、地面が揺れた。





崖上から小石が転がりサスケの指に当たる


「ぐッ!!」


指に痛みが走り
耐え唸る声を発し
手を離したら終わりだと足場を見やる。

しかし踏み場さえ無い。

チャクラを一点に集中させ踏ん張るサスケ…



そんな折‥

次なる大きな地震により手にした崖肌が崩れ、サスケは、その侭落下してしまう。

「サスケ!!」

慌てたナルトはサスケの落下点に身を呈し受け止めるようと素早く移動した。


不思議な事に
サスケは地面に叩き着けられる瞬間
身がふわりと宙を舞う感覚に囚われた。


何事かと思いつつ、地に足を付ける。


体は無傷な侭だ。


ほっと息吐けると
頭上からカラリと小石音がする。


「サスケ!危ないっ!!」

ナルトは咄嗟に危険を感じ、直ぐさま呈した身を起こした。



そして
身を竦め、腕で防御の体制を取るサスケを覆うように抱き締めた。
するとまたもや不思議な事に
頭上に降り注ぐ筈の小石連がサスケを避けるように地に落ちた。
ナルトの身体をも弾くように..。


「サスケッ!!!よかった!!!無事でよかったってばッ!!」

目を凝らすサスケにナルトが、ぎゅっとしがみ抱く。



「一体
どうしたってんだ?」


不可解そうに小首を傾げるサスケにナルトが心配して問いかける。

「どうでもいいけど
サスケ、怪我はねーか?」

サスケは考え目を凝らすナルトの声に応じる事は無く。


「サスケ、聞こえねーのか?それとも聞いてくれてねーんか?」


返答のないサスケに
悲しくなり
サスケに縋り付く。


此処で
初めて
自分の存在にナルトは気が付くのだった…




ナルトは声を震わせ愕然とする。


「あ…‥オレ……もしかして……」

サスケの温もりが感じられない


サスケは自分を感じてくれてない
サスケは自分の問い掛けに反応を示さない

『オレは…』


思い出した記憶が脳裏を支配していく…


『サスケとの対峙で確か…気を失って、それで……それで…‥』

悲しい記憶が蘇る。

涙が頬を伝う。


無機質な体を震わせて立ち竦む。


自分が『生』を得てない事に気が付くと
諭したように微笑んでナルトは理に従い天に召される事を望んだ。


そして
消えかかる直前に
ナルトは
目の前で不思議そうに腕を組み考えるサスケの頬に口付けをした。



サスケは頬を掠めた
何かに
ハッとした表情をして
辺りを見回す。


「……虫か…?」


頭にポツリと感じた水滴に気が付き空を見上げる。

「何だ。雨だったのか。さっきの地震といい
こんなに天気良いのに
雨が降って来たり…
たく、今日は何なんだ?」



涙のように
降り注ぐ雨に濡れながら天空を見渡す。


「さっき一瞬何かに護られた気がしたが…
気のせいだったか?」


そう呟きかけた

その時


何かは解らないが
空に一筋の光が遮った。


「もしかしたら
目に見えない何かが俺を護ってくれたのかもな…」

馬鹿馬鹿しいと思うが
笑いかけながらに
光遮った後空へと一言、云い伝える




「有難う……」



それが何であったか、今まで感じていた視線が誰であったかも知らずなまま…。



晴天雨が上がり


戻った青空に漂う

ナルトの姿に似た太陽と雲が

見上げるサスケに
微笑みかけるように形を変えて揺らぐ





『サスケ…
最期にオレの存在を感じてくれてアリガト』





そう伝えるように
天空から舞い降りた

柔らかな風が


サスケの雨に濡れた髪に
そよぎ

サスケ耳を優しく霞めて素通りして行った。





<終わり>



■■■■■■


4年前に書いた夢文のヒロインをナルトに変えてみました。

だからか何だか乙女チックなナルトで、すみません。
しかも死ネタで、すみません。



あきゅろす。
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