ワニノコ・ハス。


ご機嫌でいただいたワニノコを抱き上げたまま研究所を出た。
さっき助手の人からキズぐすりももらっちゃったし。これでもしヘタうっても大丈夫ね!!


腕の中のワニノコが嬉しそうにわにゃあと鳴いたとき、
前からヒビキが走ってきた。あ、マリル置いて行かれてる。

「ヒジリ…。!うわあポケモンもらったの!?」

私が抱いている足をばたつかせたワニノコを見ると素っ頓狂な声をあげた。
相変わらずヒビキは面白い子だよなあ。いい子だし。

「たしかその子…ワニノコだよね?いいなあ。もらったの?」

「うん、ウツギ博士が研究にって」

かわいいでしょ!とヒビキをじっと見つめていたワニノコを前まで持ってきてあげると撫でようと手を伸ばしたが
ワニノコがその手を噛んだ。

「うわあっ!?」「ワニノコ!?何してるの!」

「わにゃにゃにゃ!!」

大丈夫?と手を見せてもらうと傷一つついていないヒビキの綺麗な手。
どうやら間一髪で避けたらしい。ヒビキ反射神経いいな!

抱いたままのワニノコはなぜだか不機嫌そうに手をばたつかせたまま鳴いた。

「にゃにゃにゃにゃ!!」
「るりっるりりぃ!」

それを丁度追いついたマリルが鳴き声を返した。
怒られたのだろうか。すこししゅんとした感じで申し訳なさそうにヒビキを見上げている。

「ご、ごめんねヒビキ。ワニノコ反省してるみたいだから許してあげて…」

「あ、うん。僕は平気だったしいいよ

そうだ、お母さんにワニノコ見せてあげたら?」

「あっそうだね!見せてくる!…ほんとにごめんねー!」

「ううん、いいよー」






「るりりぃ?」

「なんか、ワニノコに敵視されてるみたいだね…僕。
多分ヒジリを盗られると勘違いしたんじゃないかなあ」

「るり…」

「いつまでも僕が独占できるわけでもないしなあ…」

「るりっるりり」

「そうだね、ずっと一緒にいれればいいんだけど。」

*****


「えへへっお母さんおどろいてたね!」

「わにゃあ!」

家に入ってすぐの場所にお母さんがいて、頼まれた事つたえて、ワニノコを見せてあげた。
ちょっと驚いてたけど、すぐに慣れちゃった。お母さん順応能力高くないか!!
サクならもっといい反応してくれるかもとワニノコを連れて階段を歩く。
地面におろしてみたけど、意外としっかりついてくるワニノコ。けっこう暴れるかと思ってたけど、よかった!


「サっクー!見てみて!!」

「誰がサックじゃボケ」

ふん、とこっちを向かずにベッドに入り込んでいるサク。いやまだすねてるのか
歩いて近づくと複数の足音に気づいたのかこっちを振り返るサク。と、同時に目を見開いた。

「ッ!んだソイツ!!」

「かわいいでしょ!もらったの!!」

「誰に!」

「ウツギ博士ー」

言葉のキャッチボールをしながらさらに近づくとサクがベッドから抜け出し、後ずさった
初めてみるからびっくりしてるのかなあと思いつつ足元にしがみついてこれまたすこしびびっているワニノコを見やる。

「ワニノコっていうの!」

「…名前がか?」

「いや、種族名だけど……あ」

『ワニノコ』は種族名だということを思い出しておもいつく。
そうだ、サクと同じように名前つけてあげよ!!かわいいの!
あ、地雷踏んだ?みたいな顔してるサクは放っておいてワニノコを抱き上げてベッドに座る。
わにゃあ?と鳴いて見上げてくるワニノコ。


「ワニノコ!名前つけてあげる!!」

「わにゃにゃ?」

「いや食えねえからな」

何の話?と首をかしげて床にお座りしたサクを見るとワニノコと話してんだよ、と吐き捨てられた。
ああそっか。サクはポケモンだからポケモンと会話できるのかとおもいつつ「ワニノコ、名前は食べれるものかと思ったのかあ…」と複雑な気分。食べれないどころかほぼ実在しないからね!!

「わにゃっ?」

「ああ、もうつけんならさっさとつけてやれよ
こいつ腹へってんのか」

「次なんだと思ったの?」「飲み物」「飲めねえ!」

綺麗に言葉をかえしながらふむと考えこむ。
水色かあ。水色。水。…水の上………。



「ハス」




「…ハス?それがこいつの名前?」

頭にぴんと来た言葉をつぶやくと律儀に拾い、言葉を返してくれたサク。
…うん。ハスにしようか。

「わにゃあ?」

「おい、ハスだとよ」

「わにゃ?」


こてん、と首を横に倒してから私の手から逃れ、サクの元へと近づいていくその子を見守る。

「わにゃにゃあ?」

「だからお前の名前。」

「わにゃあ?わにゃ?」

「そうだ、覚えとけよ」

「わにゃにゃにゃにゃ!!!」

「ちょ、暴れんな!しかもうるせ!」

ばたばたばたばたー!
とうるさいぐらいに暴れるワニノコ。下まで響いてるよねコレ!
サクが顔をしかめて叫ぶとワニノコがこっちに走ってきた。
そのまま私の足元に突っ込んできて嬉しそうにすり寄ってくるワニノコ。
よかった、名前気に入ってくれたのかな


足元でバタついているハスを抱き上げて顔の前まで持ち上げた

「じゃあハス、よろしくね」

「わにゃあ!」








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