枷?証?






「ねえねえサク」

「…んだ」

「ぼく、これからどうなるの?」

「知るわけないだろ」

「また、ボールの中に戻らなきゃいけないの?」

「だから知らねーよ」

急になんだこいつは。首をかしげながら疑問符のついた言葉を吐き続けるハスに適当に返しているといきなりしゅんとした


「ヒジリと離れちゃうの…?」

「………なんだ、お前懐いたのか」

顔をうつむかせ、こくりとうなずくハス。
……随分と人懐っこいもんだ。そんなんじゃ野生で生きていけねーぞ。
まあコイツは野生で生きていくようなことはなさそうだけどな


「だってヒジリ、優しいもん」

「…トレーナーは大体そうだろ

初めの内だけだけどな」

ハスの大きな目が更におおきくなる。

「……じゃあずっと一緒に居たらぼくヒジリに嫌われちゃうの?」

「嫌いとは違うだろうけどな。飽きるんだよ、あいつらは」


そうだ、あいつらは自分勝手なんだから。
いつも目先のことばかり。弱ければ手持ちを簡単に切り捨て、勝手で無茶な労働を強いて、あげくの果てにはポケモンの体の一部を売るような奴までいる。
そこまでも貪欲で自分の欲望に忠実。だから人間はキライなんだよ


「ヒジリも、ぼくに飽きるの?」


「…………………………


多分な「こらサク」

むんず、と首元をつかまれる。
無様に吊り下げられた俺様の体。いい加減にしねーとマジ噛むぞ

「…んだよヒジリ」

「飽きるとか、何のこと言ってるの?ハスに変なこと吹き込んでるわけ?」

「お前には関係ないだろ」

「あるに決まってるじゃない、何勝手な事言うの」

ぺっと投げられる。オイコラ丁寧に扱いやがれ。
ハスの隣に着地し、入れ替わりにヒジリの方へと走ったソイツを見送る
足元にひっつくとヒジリがしゃがみ、ハスの頭を撫でた

「ヒジリ、ぼくのことキライ?飽きちゃう?」

「………ねえ、なんかやっぱり言ったでしょサク。元気ないもん」

暴れないハスを抱き上げ、キッと俺を睨むヒジリ。
何言ってんだ、俺は本当のことを教えただけだっての。

「人間のこと教えてやって何が悪いんだよ」

「人間のことって何よ。



……アンタの見てきた"人間"と"私"を一緒にしないで」


意味、分かってんじゃねーか。人間。
お前も人間だ。一緒なんだよ。欲望に忠実なあいつらと。


「ざけんな、一緒だろ」

「……そんな言いきれるほどアンタ人間見てきたわけ」

呆れたように言われる

「それにアンタの人間はどーとか私には関係ないわ、

それに"私"はここの住人とはまた違うんだから。」

「どこがだよ、同じ人間だろ」

「違うわよ。

"私"はここで生きてきたんじゃないんだから」

私が生きてきた場所はあそこよ、居場所はもうないけど。


自虐的な笑み。まるで自分に言い聞かせるような。
どういう意味だ。こいつはここで生きてきたんだろう。育った場所はここだと言ったんじゃないか、本人が。


「オイどういう意味だ」

「そーいう意味、これ以上話すつもりないなー

サクに話したって理解を得られるわけでもないだろうし」

「ヒジリ…?」

けたけたけた。不思議そうなハスの声も気にせず、軽く笑うと踵を返して研究所の扉を開け、外へと出た
どうせ、これ以上問い詰めたってこいつは話さないだろう。


「……けど俺は信用しねーからな」

「もーしつこいなあ。あ、そうだ!サクいいモノあげるよ」


がさごそとかばんをあさりだしたそいつが出したのは

真っ赤なリボン。

俺様の傍にしゃがむと尻尾にそれを巻き付け始めた。

「ッオイ何してんだよ!」

「何って、リボン巻いてる」

「そういう意味じゃねーよ!!」


「信用してようが、してまいがそれはどうでもいいの。『おんがえし』使わすわけじゃないし

とりあえず私にはアンタの膨大な知識が必要よ。

だけどアンタが私の元を離れるってんなら、そのリボンが証。
私についていけなければはずせばいい。だけど私のポケモンである間ははずさないでね」

何重かに巻くとリボン結びをされ、尻尾に枷がつけられた。
解放されたと同時に飛びのき、ヒジリの真正面から対立した
怖いと感じたのかハスがヒジリの服を握る。

「はあ!?意味が分かんな…!!」

「自分にメリットがない?でしょうね、だから





私がとっても楽しい旅にご招待してあげる」



そういって手を差し出すヒジリ。

呆然とする。何を言ってるんだこいつは


「どんな愉快な見世物にも負けないぐらいの噺を展開してあげる

それぐらいしかやることなさそうだしねえ」



さあ、どうするサク?


にまり。まるで勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
……こんなムチャクチャな人間初めて見たぞ、俺様。

だからソイツに言ってやった



だったら上等だ、小娘が。
途中放棄とか抜かしやがったらすぐに喉噛み千切ってやるよ。
――――――――――――――――――
この物語浮き沈み激し過ぎる\(^o^)/


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!