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進撃×蟲師4

「ねえちょっと離してよ!あの蟲ってやつをちょぉーっと捕まえて観察するだけだから、ね?お願いったら!」

喚くハンジに「ダメだ」と首を振れば、今度は掴む手を引き剥がしにかかってきた。ハンジの予想外の力強さに手が外れてしまう。俺の腕から解放されたハンジが嬉々として蟲に駆け寄るもんだから、慌てて消した蟲煙草に再び火を灯し蟲を散らした。

「あっ、待って!」

ハンジは追うように手を伸ばすが、その腕をかい潜るかのように蟲は散って行く。

あっという間に辺りから蟲は消えた。

「あーあ、触ってみたかったのに……」

ハンジは名残惜しそうな声をあげる。

恐らく、先程木の上にいたのも蟲を追いかけた結果なのだろう。どうやらこの女は好奇心の塊で出来ているようだ。コイツを見てると、あの収集家の医師先生ですら可愛いもんだと思えてくる。

しかも今までの一連の反応から察するに、つい最近蟲が視えるようになったと思われる。どうしたものかと考えていると、不意にハンジに肩をたたかれる。

「……あの蟲というのは、見える人と見えない人がいるのかい?」

顔を上げるとハンジはそれまでの子供のような表情から一転し、年相応の表情をしていた。

「あなた、さっき私の事を『蟲が視えるタチ』と言っていたけど……それってつまり視えない人もいるってことだよね?」

一瞬先程までのハンジとの調子の落差に面食らってしまったが、すぐにハンジの問いに頷く。

「そうだ。先にも言ったように、蟲とは俺達とは異なる命の形だ。命の原始の形とも言い換えられる。そのため、多くの者は蟲を認識することはできない」

俺の言葉にハンジは考え込むようにうつむく。その口許は、どこか嬉しそうだ。

「あなたは私に蟲に触って欲しくないようだったけど、それはどうして?」

「蟲は触れば障るからだ。アイツ等は見えたり見えなかったりする曖昧なモノだが、確かに存在し、こちらに影響を及ぼしてくる。不用意に手を出していいものじゃない」

質問に答えれば、懐から取り出した紙に炭のような筆記具で文字を書き込んでいく。ちらっと見えたそれは横書きのようで、俺の知らない文字の形をしていた。

「あなたは随分と『蟲』について詳しいようだけど、もしかして研究者なのかい?」

「近いっちゃ近いな。そう言えば名乗り遅れていた。俺は『蟲師』をやっている、ギンコという者だ」

名乗ればハンジは顔を上げて「ムシシ?」と首をかしげる。

「蟲師とは、蟲の起こす現象や影響を解明し、蟲の影響に患う者を治癒する存在だ」

簡単に説明すれば、「蟲の研究者と医師を兼任しているというわけか」と納得したように頷いた。どうやら頭は悪くないらしい。

これなら蟲の危険性をきちんと説明すれば、自分から触りに行くのは抑えられるかもしれない。蟲と折り合いをつけて生活する者もいるが、関わらずに済むのなら、その方が良いのだ。

そんなことを考えていると、同じく考え事をしていたハンジが笑いながら口を開いた。

「死後の世界って薄暗くてじめじめした、陰鬱なイメージがあったんだけど……蟲とか蟲師とかとても面白そうなところだね。これなら退屈せずにすみそうだ!」

「は?」

立体起動やら何やら……最初から良くわからないやつだったが……この発言が一番意味がわからなかった。

「生前は人に見えないもの見たことなんてなかったし……何で見えるんだかさっぱり分からないけど、蟲が見える側の人間でよかったー。ホントは巨人の研究も続けたいんだけど、ここ巨人いるのか分かんないし……」

「ちょっと待ってくれ」

子供のように目を輝かせながら言葉を続けるハンジに頭痛を感じながら、彼女の言葉を遮る。

「何の世界だって……?」

聞き間違いであってくれ、と思いながら聞き返す。

「死後の世界だよ。あ、もしかして『死後』とかそういうあからさまな言葉って良くなかった?私よくデリカシーないって言われちゃうんだよね」

ハンジの目は真剣そのもので、ふざけている様子は見られない。真面目に、ここが死後の世界だと思っているらしい。

唐突にここが『魂喰いの山』と呼ばれていることを思い出して、そういうことかと頭を抱えた。

(そうか、道理で変わり者だと思ったらそう言うことか。この山の蟲に気を当てられたんだな)

村人の言っていたことは本当だったらしい。蟲が見える上に気狂いとは、かなり面倒な物件だが、放っとくわけにもいかない。

まず原因である蟲の正体をはっきりさせて、それからこいつの治療法を考えなくては。

そう決めて、俺はハンジに向き合った。


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