Material
進撃×蟲師 トリップ 死ネタあり
暗闇の中を一歩、また一歩と歩く。
ここは洞窟のようになっていて、時折分岐点や脇道に差し掛かる。
正しい道なんて知らないから、適当に勘で道を進む。
なぜこんなところを私が歩いているかといえば、答えは簡単。
私はどうやら死んだらしい。
なぜ『らしい』なのかというと、死ぬ直前の記憶がちょっと曖昧で、どうやって死んだかよく覚えてないから。
気がついたらこの暗闇に放り出されていて、私死んじゃったんだなぁ〜と実感した。
まあ調査兵団に入ったからにはろくな死に方しないと思ってた。
悔いがないかと言われたら嘘になるのだが、もう仲間の死に目を見なくて良いのだと思うと、少しだけ……ほんの少しだけ、ホッとした。
私があの世界でやれることは全てやりきったと思う。後は、彼らに任せれば大丈夫。きっと人類の未来は明るい。
ところで私、死ぬのは初めてなんだけど……死んだ後って一体どうなるんだろ?
とりあえず暗闇を進んではいるんだけど……私がこうして考え事できてるってことは、『魂』ってのは実在すると思って良いのかな?
もしそうなのだとしたら、この暗闇の先でミケやナナバや他のみんなにも会えるのかもしれない。
そう思うと楽しみだ。
会って、抱き締めて、そして彼らが逝った後のことを教えてあげたい。
そんなことを考えながら、真っ暗なうねり道を手探りで進んでいると、やっと暗闇の出口らしき光が見えてきた。
暗闇を出るとそこは、青葉の生い茂る山の中だった。
死んだ私は、天国だか地獄だかよくわからないところに辿り着いた。
「これからどうすれば良いんだろ……」
道らしき道がなかったから、とりあえずザクザクと草を掻き分けながら獣道を進む。死んだときのままの衣装だったから立体起動装置は持っていたけど、ガスも限られているし、今使うのはやめた。
死後の世界に巨人がいるとは思えないけど、何しろここは知らない土地。何が起こるかわからないのだ、用心に越したことはない。
そこまで考えて思わず笑ってしまった。
私は死んでしまったというのに、まだ自分の心配をしているのだから。
でも死んだはずの私の魂は不思議とまだ痛覚を感じているし、頭も正常に働いている。先程試しにそこら辺の石で腕を引っ掻いてみたところ、普通に血も出た。
生きていたときと、何も変わりがないのだ。
これでは当分生きていたときの性分を変えることはできそうにない。
「それにしてもひたすらに獣道だなぁ……ここには人間はいないのかな?」
時折兎や鹿のような動物は見かけるものの、人の気配が全く無い。
死後の世界ってこういうものなのだろうか。
だとしたら寂しいなぁ、等と考え事をしながら歩いていると、ふと目の前を何かがよぎった。
「え?」
目で『何か』を追いかける。追いかけた先には、見たことの無い緑に光る小さな物体が浮かんでいた。
「え、何これ……」
物体はふよふよと風に流されるままに流れていく。よく周りを見渡すと、ソレと同じような物体が辺りにたくさん浮かんでいた。
「もしかして死後の世界特有の生物的な?うっわ、超調べたい!」
手近なやつに手を伸ばしてみたものの、ソレはするりと私の手を避けて流されていく。特に行く宛もないことだし、ソレの後をついていってみた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!