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魔法×海賊11

連れていかれた先にあった食堂は、ホグワーツの食堂を彷彿とさせるほど広かった。

そこでは大勢の屈強な海賊たちがそれぞれ朝食をとっている。

「おいてめぇ!そりゃ俺の肉だ!!」

「昨日の賭けは俺ん勝ちだな」

「おーい!酒が足りねぇぞ!」

楽しげな笑い声があちこちから響き渡る。そんな中、何人かはこちらに気づいて観察するようにこちらを見た。

海賊たちの迫力に圧倒されながらも、観察される居心地の悪さに気まずさを感じていると、サッチが私の手を握って引っ張った。

「あそこが空いてるからあそこで食おうぜ」

私はぎこちなく頷きながらサッチについていく。一歩歩くごとに、回りからの視線が増えていくのを感じた。マルコはというと、自分の役目は終えたとばかりに他の海賊のところへと混じっていった。

「よう、エース!隣良いか?」

サッチが誰かに話しかけるが、サッチの大きな体に阻まれて相手がよく見えない。そっとサッチの横から覗き込むと、そこには大量の料理をすごい勢いで平らげていく、黒髪の青年がいた。

「むもぐむいいめんぐむぐ」

何か話しているようだが、口の中に食べ物が入りすぎていて、何を言っているのか聞き取れない。本人も自覚があったのか、料理を口に運ぶ手を止める。そして隣の席を指差し、反対の手で親指を突き出した。

どうやら座って良いらしい。

サッチは「サッチ様特製プレート、ちゃちゃっと作ってくるから座って待ってろな」とだけ言って、カウンターの方へと走っていった。

とりあえず、言われた通りにエースと呼ばれた青年の隣の席に座ってみるものの、回りの視線が気になってとても居心地が悪い。

うつむいて、サッチが早く帰ってくるのを願いながら待っていると、エースが話しかけてきた。

「お前、例の『魔女』か?」

やはり私が魔女だということは知れ渡っているのか、と思いながら頷く。するとエースは何か考えるようにしたあと、ニカリと笑った。

「俺はポートガス・D・エース。2番隊の隊長だ。よろしくな!」

私とそう変わらない年齢に見えるのに彼も隊長だなんて、と内心驚く。言葉の後に伸ばされた手を、少し戸惑いながら握り返した。

「ハーマイオニー・グレンジャーよ」

そのまま言葉を繋げようとしてーーー『よろしく』と返そうとして、とどまった。胸の中で、何かがチリッと痛んだからだ。

一瞬奇妙な沈黙が流れる。しかしエースは特に気にした様子もなく私から手を離し、食事を再開した。私は離した自分の手を少し見つめ、エースを見る。

「持ってきたぜー」

サッチが二つの盆をもって軽快に走ってきた。私はサッチを振り返り、プレートを受けとる。

「ありがとう、サッチ」

プレートにはジャムの塗られたスコーン、こんがりと焼けたベーコンとふわふわのスクランブルエッグ、そしてハチミツのかかったヨーグルトが乗っていた。その美味しそうな匂いに思わず生唾を飲む。よく考えれば、昨日の昼から何も食べてなかった。

「おっ、うまそう!」

パスタをフォークに巻きながら、エースはプレートを覗き込む。

「お前の分じゃねーよ、ハーマイオニーの朝メシだ」

しっしっ、とハエを追い払うようにサッチが手を振ると、エースは「分かってるっての!」と言いながらパスタを口一杯に頬張った。サッチは自分のプレートーーーこちらはライスの他にソーセージとポテトの炒めものがこれでもかと言うくらいに乗っているーーーをテーブルに置いて私の隣の席に座る。

「召し上がれ」

「いただきます!」

サッチの言葉を合図にスコーンにかぶりつく。空腹であることを差し引いてもそれはとても美味しい。私は夢中になって食べた。

「魔女とか言うからどんなやつかと思ったら……フツーの女子じゃんか」

そんな私を見たエースはぼんやりと呟く。私は手についたスコーンの粉を舐めとりながら言葉を返す。

「そうよ。人を食べるようなしわくちゃのお婆さんでも想像した?」

エースは年齢が近いからか、サッチとは違う意味で話しやすかった。そのため放った私の軽口に、サッチは笑いながらソーセージをかじる。対してエースは真剣な顔で首を振った。

「婆さんは想像しなかったけどさ。……でもまさか海賊が出した食べ物、何も疑わずに食べるとは思わなかった」

その言葉に、ちょうどスクランブルエッグを飲み込んだところだった私はむせ込んだ。片手で口を押さえながら、愕然としてプレートを見る。

「ゴホッ、これ、まさかっ……!」

それを見たサッチは慌てた様子で首を振った。

「毒なんて入れてねえよ!おいエース!妙なこと言うんじゃねえ!!」

言葉と共にエースの頭に下ろされた鉄拳が鈍い音をたてる。エースは「ぐがっ」と短く奇妙な声をあげると痛そうに頭を抑えた。

私はというと、油断しすぎたと一人頭を抱えて反省する。今回は運が良かっただけ。エースの言う通り、何も疑わずに口にすべきではなかったかもしれない。

次からは気を付けよう、とため息をつきながらデザートのヨーグルトとハチミツをかき混ぜる。すると、上の方から笑い声が聞こえた。

「殺す気ならそんな回りっくどい事せずに、倉庫に繋いでた時に殺すだろ」

その声にパッと振り向くと、そこには和服を着崩し髪を変わった形にまとめ上げた、東洋系の美人が立っていた。




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