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魔法×海賊 8

私の肯定に「そうか」と呟くようにマルコは言うと、何か考えるように少し俯き、そしてすぐに顔をあげる。

「魔法ってのは具体的には何なんだよい?」

魔女であることを話した今、これ以上隠すことは出来ないと観念して私の世界の『魔法』について正直に話した。

「私の世界では、生まれつき魔力に恵まれた人達がいて、そういう人達を『魔法使い』や『魔女』、『魔法族』と呼び、そうでない人達を『マグル』と呼ぶわ。魔法とは、魔法使いや魔女の魔力を具体的に使用した形や使用方法よ。一見、魔法は何でも出来るように見えるけれどそうではなくて、自然的法則や元素変容の法則……様々な法則に縛られ、私達はそれにのっとった上で魔力を扱い、魔法と言う形にするの」

授業での問いに答えるように、スラスラと説明を並べる。

こんな説明で良いかしら?と尋ねればマルコは再び考えるように俯き、サッチは分かったような分からないような表情を浮かべていた。

「『魔法族』……ってことは魔法は遺伝的なもんなのか?」

サッチの問いに私は首を振る。

「もちろん魔法使いの家系には魔法使いが生まれやすいけれど、必ずというわけではないわ。時にはマグルの家にも魔法使いや魔女は生まれるし、稀にではあるけど、その逆もある。実際私はマグル生まれの魔女よ」

「具体的に、魔法は何が出来るんだ?」

今度はマルコが質問してくる。先程までのお喋りとは違い、息をつかせる間もない二人からの質問に、ああ、私は尋問にあっているのだな……と頭の端で考えた。

「今の私じゃ何もできないわ。基本的に、魔法を使うには杖とかの道具が必要なの。でも杖があれば……そうね、料理や食器洗い、洗濯、掃除なんかを人の手を使わずに行ったり、壊れたものを直したり出来るわ」

サッチの「そりゃ便利だな」という呟きが聞こえてきた。

私はなるべく『無害』そうな魔法を例にとった。海賊に『危険』だと思われるような魔法を口にする気はない。

しかし私の目の前の金髪男は、そんな私の思い通りに話を進めてくれなかった。

「さっき俺の攻撃を見えねえ盾みたいな魔法で防いでたが……逆に攻撃は出来るのかよい?」

聞かれたくなかった質問に、自然と眉が寄る。しかしこの期に及んで誤魔化せるなんて思っているはずもなく、渋々正直に答えた。
「……あるにはあるわ」

私の答えにマルコはすっと目を細める。

「どんなのがあるんだよい」

「切り裂き呪文。物を切るのに使うわ。人に使えば切り傷になる。火の呪文。杖から火を起こす。浮遊呪文。重さに関係なく、物を浮かせることが出来る。便利な魔法も、使いようによれば危険な攻撃に変わるわ」

私はあえて、呪いや闇の魔法については話さなかった。さすがにそれには気付かなかったのか、マルコはなるほど、と頷いた後それ以上追求はしてこなかった。

「つまり、杖を与えれば攻撃もしてくるが、与えなければただの小娘ってわけかい」

マルコが出した結論に、咄嗟に叫ぶように反論した。

「別に私は攻撃なんてするつもりないわ!」

それではまるで死喰い人ではないか。心底心外だ、と言わんばかりに睨み上げと、マルコもこちらを見下ろしてきた。

「じゃあ俺に向かって撃ってきた『オブリビエイト』ってぇのは何の魔法だったんだよい」

「忘却呪文よ。相手の記憶から特定のことを忘れさせることができる」

「だからあの時『忘れてもらう』って言ったのか」

サッチが納得顔で頷いた。マルコは睨んだまま口を開く。

「他人の記憶を勝手に弄くるのは、『攻撃』とは言わねえのかよい?」

冷たい目で言われた言葉に、私は思わず言葉を詰まらせる。

他人の記憶は私の勝手にして良いものではない。相手が望んでいないなら、それは攻撃と呼んでも良いかもしれない。

俯いて口をつぐんでいると、サッチがすぐそばまで歩み寄ると、私と視線を合わせるようにしゃがみこむ。

「なぁ、あの時ハーマイオニーは逃げたかったんだろ?なら、わざわざ忘れさせる魔法なんて使ったんだ?」

逃げることだけに集中すれば良かったじゃないか、と言うサッチに私は俯いたまま首を振った。

「私の世界ではマグルに魔法の存在を知られることは違法なの……あの時は異世界にいるなんて思ってもみなかったし、魔法のバッグを見られてしまって、もう忘れてもらうしかないと思って……」

思わず言葉が尻窄みになる。

「『マグル』ってのは、魔法の存在を知らないのか?」

私は顔をあげてサッチを見る。そして小さく頷いた。

「そうよ。魔法使いは、マグルに存在を知られないようにしながら生きてるの。魔法法律でも、そう定められているわ」

サッチは私の言葉に一つ頷くと、立ち上がった。

「つまりあの時マルコに魔法を撃ってきたのは仕方なくだったってわけか」

ってことらしいけど〜、と間延びした声でサッチはマルコを振り返る。少しの沈黙の後、マルコはサッチの名前を呼んだ。

「俺は親父にこの事を報告に行く。誰か代わりの見張りを呼ぶからお前も後から船長室に来い」

お前の言うことを全て信じた訳じゃない、と私に言い残してマルコは踵を返した。そしてそのまま倉庫の入り口の方へ歩く。

「りょーかい」

サッチはその背中に短く声をかけて、出ていくマルコを見送った。

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