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魔法×海賊 3

ホグワーツへ向かおうとして私が迷い込んだのは、ドクロを掲げた海賊船だった。

「お前そんなことも知らないでこの船に入り込んだのかよい」

男のその言葉に首を振って訂正する。

「違うわ。私は入り込んでたんじゃなくて、気付いたらここにいたのよ」

これじゃあ埒があかない。心の中でため息をつく。

すると、誰かが近付いてきて男の肩を誰かがたたいた。

「マルコ、その子嘘は言ってないんじゃないか?」

鮮やかな、赤毛に近い茶髪をこれまた独特な形にまとめあげた男が、金髪の男に笑いかける。

「とりあえずさ、俺に任せろって」

茶髪の男がそう言うと、金髪の男はしぶしぶといった様子で私の腕を離した。

かけられていた力が突然消えて思わずよろめくが、茶髪の男がそんな私の肩を支えてくれた。痺れた腕に手をやりながら、私は茶髪の男にお礼を言う。

「……ありがとう、ございます」

「良いって良いって。腕痛くないか?ごめんな、乱暴で。あ、俺の名前はサッチ。よろしくな、ハーマイオニー」

そう言ってニッと笑った顔はどこかシリウスと似ていて、私は少しだけ息を吐いた。

「どうやって来たか分からないって言ってたけど……そもそもハーマイオニーは何処から来たんだ?」

そう問われて、私は改めてここに来る前のことを思い出す。

「イギリスのロンドンのキングズクロスという駅よ。列車に乗っていたの」

そんなこと信じられるはずがない。魔法を知らないマグルならなおさら、信じろって言う方がバカな話だわ。

そう思いながらそれでも正直に話してみる。すると、サッチは頷きながら次の質問を尋ねた。

「ここに来る前は何をしてたんだ?何か変わったことは起きなかったか?」

驚いて思わず口を開ける。何のリアクションもなく、次の質問をされるとは思わなかった。

「信じるの?」

私だって信じられないのに……そう続けると、サッチは笑った。

「ま、嘘を言ってないことくらいは分かるよ」

それで何か変わったことは?と促されて慌てて気を失うまでの流れを思い出し、大雑把に口にした。

「……突然停車中の列車が大きく横揺れしたの。立っていられないほどの揺れで転んでしまって……それで強く頭を打って気を失って、気が付いたらここにいたわ」

それを聞いていたサッチは頷き、そして困ったように頭の後ろを掻いた。

「そっか……ところでハーマイオニー」

「なに?」

何だか言いづらそうにしているのを見て先を促すと、サッチは驚愕の言葉を口にした。

「イギリスやロンドンって聞いたことがないんだけど……」

「ええっ!?」

思わず大きな声をあげてしまい、金髪の男に睨まれる。その視線に身を竦めながら、それでも驚きは隠せなかった。

「どこの海にあるのかとか話せるか?グランドラインの島なら前半か後半かでも良い」

どこの海、という聞かれ方をして、とっさに私は世界地図を思い描いた。

「ごめんなさい、グランドラインがどこを指すのか分からないのだけれど……イギリスは北大西洋にあるグレートブリテン島とアイルランド島の連合王国よ。それで、ロンドンはイギリスの首都なの。……世界的にもとても有名な国なんだけれど」

そう言ってサッチを見上げるが、サッチは困ったように首を振った。

「知らねぇなあ……誰か知ってるやついるか?」

しかし後ろの男達もお互いに顔を見合わせては首を振っている。サッチは金髪の男の方を向いて「マルコは?」と訪ねるが、彼も無言のまま首を振った。

「それよりグランドライン知らないって方がビックリなんだけど……」
後ろの男達の中から、小さくそんな声が上がった。

「グランドラインというのはそんなに有名なの?」

おずおずと尋ねてみると、サッチは大きく頷いた。

「グランドラインはまだ世界で1つの船しか制覇したことのない、偉大なる航路のことで―――まぁ、俺達が今いるこの海だ」

またも自分の常識と違うことが出てきた。

大航海時代ならいざ知らず、船の性能も人の知識も質の良いものとなった今この時代に、そんな未開の航路があるだなんて聞いたことがない。

海賊と言い、イギリスを知らないことと言い、分からないことだらけで頭が痛くなる。

そんなとき、不意に先ほどマルコと呼ばれていた金髪の男が口を開いた。

「……そのビーズバッグには何が入ってるんだよい」

指差す先には、この一年私達を助けてくれた検知不可能拡大呪文付きのビーズバッグ。中には寮で過ごすのに必要な生活品に七年生の教材、大鍋、ハリーの箒―――返すことができないまま持ってきてしまったわ―――後はお菓子や私の蔵書等々……およそビーズバッグに入るとは思えない大量の物。

思わず言い淀むと、それに目ざとく気が付いたらしいマルコがこちらに手を出してくる。

「ちょっと貸してみろい」

「だっ、ダメよ」

反射的に体を捻り、マルコからビーズバッグを遠ざけた。そんな私の態度にマルコは訝しげな目でこちらを睨み、サッチも片眉をあげる。

「別にやましいことなんてないんだろい?」

やましいこと……とは少し違うが、見られてはいけない理由は山積みだ。しかしそれを説明出来るはずもなく、口からはただ拒絶の言葉だけが溢れ落ちる。それでも何とか誤魔化さなければ、と必死に頭を働かせる。

「ダメよ、ダメ……そう、その、中に下着とか入ってるから」

「じゃあうちのナースに検分してもらうよい」

出任せの適当な言い訳なんて通してもらえるはずもなく、どんどん追い込まれていくのを感じる。

「とにかくダメなものはダメなの!!」

俯いてそう拒絶を叫べば、頭の辺りからカチャリと金属音が聞こえてきた。

「……拒否権があると思ってるのかよい?」

「……!!」

顔を上げれば、額にレトロな銃を突き付けられているのが分かる。細く息を飲み込んだ。

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