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復活×ボーカロイド3


「武!頑張りなさいよ!!」
「ファイト!武!」

「おう!ビュウッのドギャンでホームラン打ってくるからな!!」


楽しげな三つの声が響く更衣室。

更衣室には一つの影。

影の手元には二つの携帯。


「「また楽しい音聞かせてよね」」

「任せとけ!!」


影は持っていた携帯を校庭に面している窓際に置くと、バッドとグローブを持って更衣室を出た。


野球部の練習試合の行われている間、校庭には様々な音が鳴り響いていた。

ボールが風を切る音

ミットにボールが納まる音

バッドがボールを打った音

野次を飛ばす声


「いつ聞いても生き生きしてて楽しいね、リン」

「そうね、レン」


二人は外の音に耳を傾けながら笑い合う。

「「まるで音楽みたい」」



「お疲れ〜」
「お疲れっす」
「じゃあ明後日な〜」

練習試合も終わり、着替え終わった部員から徐々に荷物を持って帰り始める。

「お待たせ」

山本も着替え終わり、リンとレンの住処である携帯を持って更衣室を出た。

「約束通りホームラン打ってきたぜ!」

そう言って山本は爽やかに笑う。

「さすが武!」

レンはまるで自分の事のように喜ぶ。

「ま、その程度で調子に乗らないことね」

そう言いながらもリンも嬉しげだった。



「ただいまー親父」

「「ただいまー」」

山本が暖簾を潜りながら父親の剛に声をかけるのに合わせ、リンとレンも声をかける。

「おう!おかえり!!」

魚を捌いていた剛は顔を上げると、気前良さそうな笑顔で三人に返事をする。

「武!試合はどうだったんだ!?」

「もちろん勝ったぜ」

奥に鞄を放り投げながら山本が答えると、剛は嬉しそうに笑った。

「ま、練習試合だし勝って当然よね」

「り、リン!!」

水をさすような言葉を言うリンに慌ててレンが制止に入る。

しかし山本と剛は声を出して笑った。

「そりゃそうだ!練習で出来ねぇこたぁ本番でも出来ねぇからな!」

「リンの言う通りなのな!」

リンの毒も全く気にしていない山本親子の様子にレンはほっと息をついた。

「良かった……心が広い人達で……」



リンとレンはかつて山本ではない人間と共に生き、そしてその人間に捨てられたボーカロイドだった。

素直になれないリンと、自己主張できず不安定なレン。そんな二人の性格が原因だった。
捨てられてからはしばらくの間は自由にネット世界の中を放浪していた。

そんなある日、二人が山本家のパソコンに迷い込んだのが全ての始まりだった。

『ん?お前ら誰なのな?』

山本はパソコンの画面に映る二人に何の違和感もなく話しかけた。

『え?あ、鏡音レンです』

あまりに自然に話しかけられたため、レンは思わず返事してしまった。

『何返事してんのよ、レン!!』

黙ってたら誤魔化せたのに!!

リンに突っ込まれ、レンは慌てて口をつぐむ。
しかしもう後の祭り。

人間不信となっていた二人は、ちょっと青くなりながら山本を仰ぎ見た。

―――しかし

『お前レンっていうのか〜。あ、俺は山本武!よろしくな!』

山本は二人に自己紹介して笑うだけで何もしなかった。

二人は思わず顔を見合わせる。

『え?それだけ?』

『……私達お喋りしてるのよ?』

パソコン画面の存在と会話するという奇怪体験に全く動じない山本に二人はポカンと口を開けた。

そんな二人に山本は今更気付いた、というように『ああ!』と言った。

『言われてみればすげーのな!』

それが三人の最初の出逢いだった。

それからは二人が山本を気に入ったのもあり、放浪生活に飽きていたのもあり、山本の家に住み着くようになった。


(武ってほんと……有り得ないほどの天然だよな……)

レンは一人しみじみ頷く。

しかも何に驚いたって父親の剛もあの後自分達と会ったとき、武と同じような反応だったということだ。

(親子だな〜)

「レン!何ぼーっとしてるのよ!!」

リンの声によりレンは思考を止める。

「剛パパがお魚捌いてるよ!!」

リンの言う通り、店には剛の包丁の音が響いている。

その音は軽やかで、自然とレンの口角も上がる。

「武の音も剛パパの音もどっちも楽しいね、リン」

そう言うと、リンは目を細めて笑う。

「何当たり前の事言ってんのよ、レン」

二人はお互いに顔を見合わせ、笑い合う。


(武も剛パパも……二人ともいい人だし……ここに来て良かったなー……)

レンは心の中で呟きながら包丁の音に聞き惚れていた。



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