Material 復活×ボーカロイド2 「隼人ー!アンタ授業はー?」 獄寺のポケットに入っている携帯から綺麗な女の声が聞こえてくる。 獄寺はそんな怪奇現象にさして驚くこともせず、携帯を取り出して開いた。 「今はウゼェ上にアホな先公の授業だかんな。サボり」 獄寺は屋上の給水タンクの上に寝転がりながら声に応えると、携帯の中から「不良ね」と返ってくる。 「……っつうかテメェも昼間っから酒飲んでんじゃねぇよ、この飲んだくれ!」 携帯画面に映された光景―――何本もの空き瓶に囲まれた赤髪の女性の姿を見た獄寺は即刻にツッコミを入れる。 すると画面に映し出された女性は側にあった酒瓶をぎゅっと抱えた。 「なによぉ、アタシから酒を取り上げようって言うわけぇ?」 そう言いながら女性は新たな酒瓶を開ける。 「ったく……どっから持ってくんだよ、その大量の酒は……」 結局言っても無駄だと知っている獄寺は諦めたようにため息を吐いた。 「不良のクセに変なとこ真面目よねー隼人は」 ぐびぐびと酒瓶から直接酒を飲みながら、女性は画面越しに獄寺を見やる。 「うるせえ、名前で呼ぶなアル中女」 真面目だと言われたのが嬉しくなかったようで、獄寺はブスッとしながら悪態をつく。そんな獄寺に女性は呆れたような笑みを浮かべた。 「アンタは人を名前で呼びなさいよね。私はアル中女じゃなくて『MEIKO』よ」 Repeat after me MEIKO! 小馬鹿にしたようにそう言われた途端、獄寺は携帯を閉じた。 「んもー隼人は恥ずかしがり屋ね」 閉じた携帯の中からそんな声が聞こえてきたから今度は電源をブチ切った。 そしてやっと静かになる。 「ったく……何でこんなことになってんだか……」 一人ごちにそう呟くと、獄寺はこの貴重な静寂を無駄にしないためにも完全な寝の体勢に入った。 数年前。 一匹狼よろしくイタリアを一人ブラついていた頃。 まだボンゴレに属しておらず、スモーキン・ボムとして名前も売れていなかった頃。 有り金尽きてしまい、金のためにとあるバーでピアノの生演奏会をやっていた。 その日もまあまあの金を貰い、俺は店から外へ出た。 ブラブラと夜の町を歩きながら飯をどこで食べるか考えていたとき、突然後ろから英語で話しかけられた。 「アンタ、凄く綺麗な『音』奏でるのね」 「あ゛?」 突然話しかけられたことにイラつきながら振り返ると、そこには誰も居ない。 気のせいかと首をかしげていると、また声がした。 「アンタどこ見てるの?こっちよ、こっち」 確かに声がしていた。 俺はキョロキョロと周りを見渡し、そしてやっと音源を見つける。 「……携帯?」 通話状態のままなのだろうか? そんなことを思いながら誰かの落とし物であろう携帯を拾い上げると、携帯が突然けたたましく鳴り響いた。 「大正解!拍手〜!!」 携帯の画面では赤い服の女が手を叩いていた。 「アタシMEIKO!!ねぇ、アタシ、アンタの演奏に合わせて歌ってみたいな!良いでしょ?」 それがメイコと俺の出逢い。 「隼人!隼人ってば!!」 獄寺はメイコの声で目を覚ます。 「……って電源切ったはずだろ……!?」 寝起きの良い獄寺は切ったはずの携帯からメイコの声がするという異常な状態に気付き、疑問の声を上げる。 「……自分でアラーム設定したんじゃない、昼休み前に」 今度はメイコが呆れたようにため息をつく。 「ほら、『10代目』とご飯たべるんでしょ?」 そう急かすと獄寺は慌てて身なりを整えた。 「やっべぇ!急がねえと!!」 獄寺は携帯をポケットに入れて立ち上がった。 「さあ、10代目のトコまでレッツゴー!!」 「お前ぜってぇに10代目の前で喋ったりすんなよ!?」 「えぇーー!?ケチ!!」 そうして二人は屋上を後にした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |