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アンジェリークNOVEL
横顔(ジュリ←ロザ)
「光の守護聖、ジュリアス様……」
 謁見の間での守護聖たちとの顔合わせ。広間に居並ぶ守護聖たちを前に、ロザリアの瞳は一人の人物の姿を捉えて丸く大きく見開かれた。

 流れる長い髪が光を返しながら胸までかかっている。闇を纏った守護聖が隣に立つからか、ジュリアスの姿は目を細めて見てしまうほど眩かった。横にいるライバルである少女もまた、背の高い光と闇の守護聖を見上げながら、ぽかんと口を開けていた。ロザリアは膝を折り女王陛下の両翼である守護聖へお辞儀をした。
 彼がそのサファイアの瞳を御座の女王陛下へと注ぐ様子を窺い、やっとロザリアは顔を上げてジュリアスを見つめた。



 彼の前でリラックスすることは不可能だった。
 執務室へ向かう時も王立研究院で偶然会った時も、そして息抜きも必要だと彼が休日に公園に誘ってくれた時も。
ロザリアは、誰の前でも完璧な女王候補でいたかったが、とりわけ光の守護聖の前ではそうありたかった。みっともない姿など、絶対に晒したくなかった。
 けれど彼の瞳が自分へ向けられると、ロザリアの頬は熱く火照り足は縺れ、ただ歩く事すら不自然になる気がして困惑した。


「女王陛下のお力をそなたも感じぬか? 常に宇宙を包み込む聖なる翼を。大いなる陛下のために、私に何が出来るだろうか」
 公園を共に散策した折、女王陛下の像の前で立ち止まりジュリアスはじっと像を見上げた。ロザリアは自分から外された視線にほっと息をつき、光の守護聖の横顔を見つめた。
「ジュリアス様がいらっしゃる事で、陛下はとても心強い筈ですわ。わたくしは陛下も、ジュリアス様の事も、尊敬しております」
 そうして彼の横顔なら、ロザリアは安心して見ることが出来た。彼が陛下を見つめるその情熱と同じだけ、ロザリアもジュリアスを見つめることが出来る。

 陛下の像から目を下ろさず、ジュリアスは呟いた。
「我ら守護聖はみな、女王陛下の僕に過ぎない。だが私は陛下に頼りにされる一番の存在であれたらと、望んでいる」
「陛下はきっと、そう思っていらっしゃいますわ」
 ロザリアが返答すると、ジュリアスは彼女を振り向いた。
「そなたは次代の女王陛下になるやもしれぬ。その折にもそう思ってもらえるよう、私も努力しよう」
 向けられた柔らかな笑みにロザリアの頬は赤く染まり、それを隠すように彼女は深くお辞儀をして答えた。
「わたくしも、努力致します」


 ロザリアは、結局光の守護聖の視線の先にいる存在へは成り得なかった。
 親友でもある少女の、その体に秘めた女王の資質に誰よりも先にロザリアは気付いた。彼女の補佐に回ることに、今はもうロザリアには躊躇は欠片もない。
 けれど今日も。
 玉座の女王陛下の下へ控え、瑠璃色の瞳が高い位置へ注がれるのを、ロザリアは見る。
 その横顔は今も、彼女の視線を捉えて離さない。


end



ロザリアindex
NOVEL INDEXTOP




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あきゅろす。
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