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アンジェリークNOVEL
Powerful morning(オスリモ)
「やあ、お嬢ちゃん!」
「オスカー様。朝からお元気ですね」
 アンジェリークは机からノートをまとめて、トンと揃えた。
「ああ、お嬢ちゃんの可愛い顔を見られたからな」
「そうですか。で、どいてくれませんか」
 額に手を当ててオスカーはふっと笑った。
「また、そんなつれない声で、俺の心を煽ろうってんだろう?罪なお嬢ちゃんだ」
 彼がどかないので、アンジェリークは横をすり抜けて私室のドアを開けた。
「ちょ、ちょっと待ってくれお嬢ちゃん」
 すたすたと寮の廊下を進みながら、アンジェリークはオスカーへ声だけを向けた。
「もう、なんですかオスカー様。わたしは忙しいんです!」
 オスカーはアンジェリークの肩をつかみ、くるりと自分のほうへ向けた。
「今日は君を独り占めしたくてな。誘いに来たんだぜ?」
 ふうぅ、アンジェリークは溜め息をついてから、キッとオスカーを見上げた。
「いつもそう言って、先週はもう4日もオスカー様と過ごしましたよね?今週末は定期審査があるんです!育成で忙しいんですってば!」
 じいぃっとオスカーはアンジェリークの瞳を見つめて囁く。
「お嬢ちゃん、俺と大陸の育成と、どっちが大事なんだ?」
「今は、育成です」
 あっさりと返され怯んだオスカーを置いて、アンジェリークは階段を降りる。

「俺がまた夜、贈り物として炎の力を送っておくぜ?それでもダメなのか?」
 ぴた、とアンジェリークの足が止まったのが窺えた。オスカーは調子に乗って階段の手摺りに肘を付き、振り向いた彼女へウインクした。
「エリューシオンもお嬢ちゃんも、このオスカーの力で骨抜きだぜ」
 アンジェリークが階段をすごい勢いでだだだっと登って来た。そしてオスカーへ人差し指をびし!と付きつけると言った。
「贈り物はうれしいんですが、そのせいで民の望みが分かりにくくなるんです!オスカー様も守護聖だったら、女王候補であるわたしの邪魔をしないでください!!」
 アンジェリークは「邪魔」を2倍の大きさの声でオスカーへと叩き付けた。そして呆然としたオスカーを置いて、階段を再びすごい勢いで駆け下りていった。

「オスカー様。おはようございます」
 横からの声に振り向くと、ロザリアが廊下へ出て来ていた。
「お嬢ちゃ……」
 今の、聞かれていたのか? どうしてもオスカーの笑顔が引きつったものになる。だがロザリアはにっこりと微笑むとオスカーを間近で見上げた。
「あの子、いつもオスカー様のことをわたくしに惚気ていますのよ」
 どうやら、聞かれていなかったらしい。すぐに立ち直ってオスカーはふっと笑い、髪を掻きあげた。
「まあ、な。俺とお嬢ちゃんの親密度はかなり高いからな」
 羨ましいですこと。そうロザリアは言いつつ階段へ向かう。
「ですけれど、今日はオスカー様、執務室にいてくださいませね?」
 それを聞いてオスカーは眉を上げた。
「ああ、すまなかったな。お嬢ちゃんは俺に育成の依頼があったのか」
 足を止めてロザリアはすぐに頷いた。
「そうですのよ。先週はあの子と出掛けられてばかりで、オスカー様ったらちっとも捕まらないのですもの」
 細い顎をツンと上げてロザリアは顔をそらした。それを見てオスカーはにやりと笑った。
「なんだお嬢ちゃん、妬いてるのか? じゃあこのオスカー、今日はお嬢ちゃんを誘おうか。しかし、たくさんいるお嬢ちゃんの信奉者達から恨まれたくはないな」
 顔をそらしたままロザリアは階段へと足を掛けた。
「出掛けてもよろしいですけど、あの子が聞いたらきっと焼きもち焼いて大変ですわよ。そりゃもうあの子は、オスカー様にくびったけですもの」
だがそこまで言うとくすっと笑ってロザリアはオスカーを振り向いた。
「でも今日は、振られるし、邪魔するなって言われるし、朝から大変ですわね」
 ……全部聞いてんじゃん!
 女王候補ふたりの後ろ姿を見送りつつ、朝から脱力するオスカーであった。

end



リモージュindex
NOVEL INDEXTOP




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あきゅろす。
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