03-08 目を開けると、一面真っ白。 それが天井で、ここが病院だと気付くのに少し時間がかかった。 痛みと吐き気は消えていて、代わりに気だるさが残っている。 「目覚めはどうですか」 ベッド際を見ると忍足くんがいた。 笑っているもののどこか不安そうで、とても申し訳なく思う。 「まぁ、そこそこ」 「何かあったら遠慮せんと言って。親戚にも言うてあるし」 「親戚?」 「ここ、親戚の病院やから」 「は?」 得体の知れない人だと思っていたけれど、まさかこんな病院を持つ親戚がいるとは想像していなかった。 聞けば彼の親も医者だという。 確かに彼の通う氷帝はそういう人ばっかりだと聞いたことはあったけれど。 「私、何も知らない。君のこと」 「最初から全部知ってたら怖いて」 「何考えてるかわかんない」 「よくそう言われんねんなぁ。でも葵さんにはひとつも嘘はついてへんよ」 「…そう」 それがあの告白のことなのはすぐにわかった。 何も言わずに私の頬に少し遠慮がちに触れた。 元彼に触れられるのはあんなに嫌だったのに、どうして彼の手は大丈夫なんだろう。 そう考えながら彼を見上げていると、不思議そうに笑った。 「ずっとそばにいてくれたの?」 「…まぁ、心配やし」 頭をなでられて自然と落ち着く。 そして手が離れて、少し寂しく感じているのに気付いた。 「どうしたん?」 そう言われて私が無意識に彼のベッドに置かれた手を握っていることに気付いた。 気付いて、とっさに離そうとしたら、逆に握り締められる。 その手はかすかに震えていて、それを消すように力が込められた。 「ちゃんと待つつもりやったねんけど無理やわ」 「どうし…」 そのまま引き寄せられて、抱き締められる。 体がとても熱かった。 「お願いやから一緒にいてくれへん?」 その言葉がとても切なくて、胸が締め付けられる。 まるで迷子になった子供のようで、抱き締めたい衝動に駆られる。 縋りつくように抱き締められて、私は気付いたときにはうなづいていた。 [*前へ] [戻る] |