03-01 翌日の日曜。 何年も続けてきた習慣は簡単に変えられるわけもなく、忍足は朝連の時間に自然と目を覚ましてしまった。 ほとんど強引に決めた葵との約束は昼からだったので、ひと汗ながそうと近くのテニスコートに足を運んだ。 「おう、忍足」 「どうしたん、宍戸」 「お前こそ。今日はデートなんじゃないのかよ」 「行く前のひと汗って感じ。コート入りや」 まだ早朝なのもあって、他のコートにも誰もいない。 人前では氷帝という看板を背負っていなければいけない二人にとっては、こういう時間が一番リラックス出来る。 お互いにそれをわかっていて、特に激しいプレイもなく、軽いラリーを続けた。 「本気なのかよ」 「なんやな、急に」 「昨日の人だよ」 恋愛関係にはまったく興味のない宍戸からのめずらしい切り出しに、忍足は少し笑った。 「あんまりからかい過ぎないほうがいいんじゃないか?」 「どういう意味?」 「それはお前が一番知ってるだろ」 「いつも通りやけどなぁ」 ラリーを止めたのは宍戸だった。 ラケットではなく素手でポールを取ると、そのままベンチに座った。 その姿を見ながら忍足は納得したかのように笑う。 「自分に似てるて思ったんやろ?」 「…ちょっとだけな。だからちゃんと向き合えって言ってるんだ」 「めずらしい宍戸サンからのご意見やし、心に留めとくわ」 「おう。そうしてくれ」 忍足の言葉に安心したように宍戸は笑った。 [次へ#] [戻る] |