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02-02




出社して鞄を席に置くのと同時にパソコンの電源を入れる。
自販機で買ったコーヒー片手に戻るとメールの着信を知らせる文字。
嫌な予感がよぎった。
休み前に調整に行った会社からだ。
予想的中。システムの不具合だ。
それから電話でやり取りするが埒があかない。
先方の人事異動に口を出すつもりはないが、せめてシステムについては引継ぎをしておいて欲しかった。
上司に了解を得て先方へ出向き、会社に直帰の連絡をした頃には18時を越えていた。

本音をいうと、助かった。
元彼とその浮気相手(今は立派な彼女だけど)とは部署は違えど同じ会社。
出来るなら休みたいくらいだったから。
報告を終えて携帯や書類を片付けてタバコを取り出す。
火をつけて電車を待つ学生をぼんやりと眺めていると、元彼と同じくらい会いたくない人の声が背後から聞こえた。


「会社帰りですか?葵さん」


名前を呼ばれてるのに知らないフリをするわけにもいかず、振り返ると案の定あの彼だ。
昨日と同じ笑顔で微笑む彼に営業スマイルを返そうとしたけど、それより先に目に飛び込んできた光景が理解出来なかった。


「趣味だったら悪いけど…コスプレ?」


彼が身を包むのは制服。
それもご丁寧に近くの名門校・氷帝学園高等部ときた。
違和感を感じさせないくらい着こなしてるのが何とも言えない。


「まさか本物ですよ」
「ほん・・・本物?」
「現役高校生です」


語尾に「♪」がつきそうな軽やかに言う。
自分の顔が真っ青になるのがわかった。
私はこの瞬間まで彼の事を1・2歳くらい下にしか思ってなかったのだ。
叫び出しそうな喉をなんとか押さえ込み、再度問う。


「高校生?」
「高3です」
「でもダーツバー…」
「そのへんは社会勉強てことで。ちゃんとお酒は控えたんやし」
「おさ…当たり前じゃない!」


どうやら私は現役高校生を飲みに連れ回した上に、自分の部屋に誘い込んだらしい。
(誘った記憶なんて全くないけど)
彼の背後でこちらの様子を伺う子達が同じ制服を着ていて、彼が高校生じゃないと疑う余地はないと思った。

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