03-11
長い日も終わり、外はすっかり暗くなった。
今まで大会でしか会うことがなかった面々は、あたりが暗くなってきても帰る気配がないほどに盛り上がっていた。
その事情を悠から聞いた真紀が、自分の店を貸してくれることになった。
真紀は夜は海近くで沖縄料理店を経営している。
時々悠も手伝いに行く、行きなれた店であった。
真紀の好意で出された夕食を気持ちいいほどに食べ尽すと、再び思いで話に花が咲く。
悠は嬉しそうな、しかしどこか複雑そうな顔でその様子を見ていた。
席は二階にあって、そこから一階を見下ろすと正面にカウンターがある。
悠はそこに座って、二階の様子を見ていた。
「戻らなくていいの?」
「ん、大丈夫」
カウンターの内側にいる真紀は食器を洗いながら、戻る様子のない悠に話しかけた。
淳は幼なじみではあるけれど、それはテニス部とは別の関係。
テニス部の淳をあまり知らない悠は、会話の中に居づらさを感じでいた。
「真紀さん、ごちそうさま」
悠は空になったグラスを真紀に渡すと二階から下りてきた亮に駆け寄った。
「悠、上に来ないの?」
「なんで教えてくれなかったの」
「何を?」
聞き返す亮の腕を掴んで、店の奥にあるドアを開けて、お手洗いへと続く暗い廊下に連れ出した。
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