03-15 「亮はどうしたかったわけ?」 「何が?」 家族が寝静まったリビングで、二人は面白いのかもわからない深夜番組を見ていた。 淳の問いかけに、亮は相手を見ることなく答える。 「悠を困らせちゃダメじゃん」 子供に聞かせるような口調で言う。 「いつだって悠の味方なんだな」 「亮だってだろ?」 「バネと付き合ってても?」 「…どういう意味?」 亮はテレビを消すと立ち上がり、ソファーに座る淳を見下ろす。 「ルドルフに行く時に悠を切り捨てたのは淳だからな」 そう言い残し亮は自分の部屋に行った。 残された淳は再びテレビを付ける。 「切り捨てるなんて酷い言い草だね」 誰もいなくなった部屋でテレビに向かって言う。 ブラウン管の中では名前も知らないアイドルが微笑んでいた。 ルドルフに転入するために地元を離れた日。 見送りに来たのは悠だけだった。 六角を離れることを選んだことは一度も後悔したことはなかった。 唯一、淳の心を引き止めていたのは悠の存在だった。 「あれで良かったんだよ」 ソファーに寝転んだ淳は自分に言い聞かせるように呟いた。 [*前] [戻る] |