03-13 「はい、そこまで」 二人が声のした方向を向くと、そこには淳が立っていた。 亮がばつが悪そうな顔をして悠から離れると、力が抜けたかのように悠はよろめく。 「悠、大丈夫?」 「ん。ありがと」 淳はとても自然に悠の手を取って、支える。 見上げた顔はとても優しく微笑んでいて、同じ双子でもこんなに違うのかと思わせる。 そんな安心したような顔をした悠を見て、亮は小さく舌打ちをした。 「どうかした?」 「なんでもない。先に戻る」 そう言ってドアを開けた亮は、そのまま立ち尽くした。 続いて入ろうとした悠は、その先を覗こうとするものの亮に阻まれて見えない。 「どうし」 「バネ…」 悠の声に重なるように発せられたのは、黒羽の名前。 とっさに振り払おうとした手を逆に強く握られ、淳の顔を見上げた。 「戻るぞ、悠」 「え?亮?」 「バネ、お前もだよ」 「ちょ、何でだよ」 亮は強引に悠の手を取り店内へと入っていく。 途中で振り返えると淳が不敵な笑顔を見せた。 同じ顔でそんな風に笑うな、と心の中で悪態をついてみるけれど、それを口に出す勇気はなかった。 [*前][次#] [戻る] |