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03-10


「なに?」
「けが、したの?」


黒羽は悠が見ていた右腕を見て、納得したかのように笑う。


「男の勲章ってやつだよ」


そう言って笑顔を深めた。
太陽のように笑うというのはこういう事なんだろうと思いながら笑顔を返す。


「無理しないでね」
「あぁ」


短い返事の語尾にかかるように葵が大声を上げる。
それにつられて海で遊んでいた全員が葵の視線を追いかけた。


「淳!!」


誰がその名前を呼んだかわからなかった。
悠はその名前に体が反応して振り向いて、凍りついたように体が動かせなくなった。
でも寒さを感じたのではなく体が熱くなっていった。
自分も知らないような熱。


「ただいま」


太陽に照らされていたけれど、その笑顔が誰なのかはっきりとわかった。
淳の視線が悠を捕らえる。
だけど何も返すことが出来ず、ただただ相手を見ることしか出来なかった。


「…淳…」


浜辺におりてきた淳を子供のようにはしゃぎながら囲むのを見ながら、悠はまだ動けずにいた。
そして何も話せずにいた。
確かに瞳はその姿を追っているというのに。

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