03-07
「ちゃんとつかまえておかないと、とられちゃいますよ」
「ご忠告どうも」
「余裕ぶってる場合じゃないと思いますよ」
葵は新しい遊びを覚えた子供のような笑顔をして言った。
その様子を見ながら亮は、それが現実にならないよう願う。
本当なら悠の気持ちを黒羽に伝えて、二人をちゃんと恋人という道に誘導したほうがいいのはわかっていた。
でもそれをしないのは誰かが助けないと壊れてしまうような関係であれば、早く壊れてしまえばいいとも思っていたから。
「難しい顔してるのね、亮」
「そう?」
樹にいつもの笑顔を向ける。
すると樹も笑顔で返してきた。
「子守りは大変ってことかな?」
「ま、そういう感じで」
溜め息をつく樹を見ながら、やっぱり侮れないなと思う。
いつも何も見てないフリをするくせに、余計なものまで見ている。
それで全員が助けられたことがあるのだけれど。
「何、内緒話してんっすか」
「内緒なので言えません」
「そうなのね」
「あーなんかむかつく!」
「そう言わずに。今日はお楽しみがあるんだから」
「そうだ!早く行きましょう!!」
亮の言葉に不機嫌だった葵の顔つきが変わる。
そのまま全員をまくしたてて、部室を出た。
そして向うのはいつもの海。
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