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03-06
終業式が明日に迫ると学校中が夏休み一色になる。

それはテニス部も同じ。
数日前の県大会で惜しくも準優勝となってしまったため、3年は引退となったが、後輩の要望で夏休みいっぱいは可能な範囲で練習相手になることになった。
全国大会出場を目指していた部員にとって県大会敗退は悔しいことだけれど、その悲しみをいつまでも引きずらないのがテニス部のいい部分である。

部長を始め、ほどんどの部員が空いてしまった予定をどのように過ごすか考えることを楽しんでいた。


「夏祭りは最終日に行くって決まりました!」


部員の中でも特に楽しんでいるのが葵で、そのテンションの高さに佐伯はうんざりしていた。


「俺、予定あるかも」
「うわ、抜けがけ」
「抜けがけしたかったら彼女作れば」
「めっちゃムカツクー!!」


佐伯は、葵の尖った視線を受けながら、ホワイトボードに書かれた自分の名前を消す。
そこに進路相談で遅れて黒羽がやって来た。
その姿を葵が不思議そうに見る。


「あれ、悠さんは?」
「先に来てるんじゃねぇの?」
「悠はとっくに帰りましたけど」


二人のやり取りは不機嫌そうな果歩の声でストップした。

あのテスト最終日から翌日には悠と黒羽が付き合っていることは噂になり始めた。
問題はその後。
あまりにも変わらない二人の様子にデマなんじゃないかと言い始める人が出てきたのだ。

二人の一番近くにいる(と思われている)果歩は、その噂をよく耳にしていた。
クラスメイトから見知らぬ後輩まで、聞かれるたびに否定をしてきたけれど、時々自分が間違っているのではないかと思うほど、二人の関係は何も変わっていない。
帰りの時間が重なれば一緒に帰っている程度。
休日は黒羽はテニス、悠はサーフィンと一緒に過ごしている様子はない。
しかし当の本人たちはそんな話は気にならないようなので、そんな噂はほっておけば消えてしまうのだろうけれど。

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あきゅろす。
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