03-05
「よかったじゃん」
「え?」
「付き合うんでしょ?」
「…告白されたわけじゃないかもしれない」
「は?」
悠はぼんやりと海の方向を見ていた。
寝転んだままの亮からは表情が見えなかったけれど、きっと複雑な顔をしている。
その理由が亮にはわかっていた。
「付き合ってることにしとけよ。バネって案外押しに弱いからさ」
「そんなの意味ない」
「…バネと淳は違うだろ」
図星、とでもいうように悠は言葉を失った。
悠はまだ淳が千葉にいる頃、似たようなことがあって同じように助けられていた。
そして、淳が言った言葉。
『危なっかしいから見てられない。だから俺から離れるなよ』
あまり思い出すことがなくなっていたのに、こんなにも鮮明に思い出せるなんて。
その時の胸の高鳴りや、彼の表情。
悠の瞳にはすべてが鮮やかによみがえる。
同時に勘違いをしていたんだと気付いたときの悲しみも。
「あんな思いはもうしたくない」
悠の悲痛な声に、亮はただ空を見上げることしかできなかった。
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