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02-04
淳に出会うまで誰かのことを想ってあんなに心が苦しくなるなんて知らなかった。
そういう恋はフィクションの世界だけのもので、私は一生体験することはないことだと思っていた。

初めて本当の恋を知った私は、それに夢中になり溺れていった。
でも素敵な結末を迎えるのはドラマの中だけで、私に訪れた結末は非情なものだった。


「俺にも、悠にもこれからたくさんの出会いがある。だから俺に縛られないで自由でいて」


それは彼が私に残した最後の言葉。
彼を引き留めることはもちろんのこと、約束さえ許してもらえなかった。
学校でも家庭でも居場所を見つけられずにいた私には淳は数少ない居場所。
そう思っていた気持ちはいつしか彼に重荷となっていたのかもしれない。
そのことにも気付けないほど盲目だった私は、淳がいなくなって何もかもがどうでもよくなって、毎日朝から夕暮れまで海にいた。
海に出れば忘れられると思っていたけれど、もうあの想いは消えてしまったのだと思っていたけれど。

自分自身に翻弄されているようで、とても気分が悪い。
まるで船酔いしているように世界がぐらついている。
いつか風化するだろうと思っていた想いは今だに消えることなく胸を締め付ける。
でも時間が過ぎるのを待つ以外に術を知らない。
もし何もかもを消してしまえるなら…そう想像しそうになって考えるのをやめた。

消してしまいたい思い出が多すぎる。


「悠?」
「真紀さん」


サーフボードを抱えて海を見ていたら、いつの間にか私の隣に立っていた。
私を見てほほ笑むと同じように海を眺める。
私たちの視線の先には兄たちがパドリングをしながら来る波に向かっていた。

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