02-03 突然、笑っていた顔が真剣になり、私は無意識に背筋を伸ばしていた。 そして頭のどこかでとても冷静に、こんな顔を見るのは何年ぶりなんだろうかと考えていた。 「淳のときと同じことだけはしないようにね」 息が止まるかと思った。いや、もしかしたら止まっていたかもしれない。 「そんな顔をするところを見ると大丈夫だと思うけどね」 どんな顔してるんだろうかと思ったけど、きっと酷い顔なんだろうな。 同時にそれほどにもまだ色濃く残っているのだと実感した。 もう、四年も前のことなのに。 「亮には関係ない」 そんな台詞は言い訳でしかないことくらいわかっていたけれど、否定するしか出来なかった。 そうじゃないとダメな気がしたから。 「今年の夏休みに淳が帰ってくるよ」 ずっと止まっていた何かが動き出す音が聞こえたような気がした。 [*前][次#] [戻る] |