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01-14
走ることをやめてしまったら何かに追い付かれてしまいそうな感覚で悠は走った。
どこを目指すわけでもなく、逃げるように。
苦しさから吸い込んだ空気に潮の香りが乗ってきていることに気付く。
いつの間にか無意識のうちに海を目指していたようだ。
もう仲間が帰った砂浜を眺めながら近くで買った水を飲む。
砂浜に降りて制服が汚れるのもかまわず座る。


「もう嫌だよ」


思い出したくない記憶を必死に押し込める。
それでも繋がってしまう。
ぎゅっと膝を丸めて座っていると広い世界に自分しかいないような感じがする。
そして夕陽を飲み込んだ海がそれを助長させる。
海を優しく感じるのは、海が何もかもを受け入れてくれるからかもしれない。
しかしそれは時として人が抗うことの出来ない力で全てを飲み込んでしまう。
それならばこの記憶も飲み込んでしまって欲しいと悠は思った。


「南浦?」


名前を呼んだ声に振り返ると出来るなら会いたくない人がいた。
しかし同時に会いたいとも悠は思っていた。
黒羽は身軽に浜辺に下りて来ると悠の傍に歩み寄る。
昨日が初めて話した日で、それまでは全く気に止めなかった相手になんでこんなにも心動かされるのだろうか。
そんな事を考えながら黒羽を見る瞳は無意識に熱を帯びていて、自分に向けられた視線に黒羽は戸惑った。


「今、帰り?」


裏返りそうな声を必死に押さえ込んだつもりだったけれど、どこかぎこちなかった。


「テニス部の奴らと海で遊んできたんだ」


黒羽が返事をすると悠は笑顔を浮かべ、暗くなり始めた空を見上げる。
お互いに何か言いたげな雰囲気を漂わせながらも切り出すことが出来ずにいた。

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あきゅろす。
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