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きっとあの日はその年の最高気温を記録していたに違いない。
それほどに暑くて、油断したら倒れそうだった。
全国大会への出場を決めた高校三年生の夏。
試合を終えて表彰式を待っている間に仁王の付き合いで見に行った女子テニス。
弱小と言われ続けた女子テニスは仁王の幼なじみ・●が牽引し、決勝までのぼりつめていた。
「もう終わっちょるやん」
仁王の言葉を聞いて周りを見回すと少し離れたベンチに部員らしき人たちといた。
静かに近寄ると会話が聞こえてきて、足を止めた。
「気にしないで。全国に行けないからってテニスが出来なくなるわけじゃないから」
その会話から試合に負けたことがわかった。
どう声をかけようかと迷っていると●が話していた相手が立ち去り、一人になったようだ。出て行くタイミングをうかがっていると●の声が響いた。
「ブン太、バレバレだから」
ベンチに座る●はいつもと変わらない笑顔を見せる。
あまりにもいつもと変わらないことに違和感を感じるべきだったんだ。
俺はちゃんと顔を見れず、一度顔を見てからはずっと両手を行き来する缶ジュースを見ていた。
迷った末に出た言葉。
「また、頑張れよ」
「また?」
あの時の微かに揺れた瞳と、絞り出したような声は今でも鮮やかによみがえる。
「アンタならわかってくれてると思ってた。またなんて二度とないって」
開けられることなくベンチに置き去りになった缶がどんどん汗をかいていく。
流れ落ちる雫は涙のようで、手を出すことが出来なかった。
何度、後悔しても戻らない。
あの夏は一度きりなんだ。
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2008/8/2
(2012/5/7 加筆、旧サイトより移行)
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