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「たかが産まれた時間の差なんかで諦められるほど安っぽい想いじゃない」


そう言って俺を睨み付ける瞳があまりにも綺麗で言葉を失った。
そして●が生徒である前に一人の女だったんだと思い知らされる。


「一時の感情に惑わされるな。錯覚だ」


そう言って椅子を軋ませながら背を向けた。
これ以上、関わってはいけない。
教師である自分に言い聞かせた。
でもあの瞳が今どんな風に自分を見ているのか気になって横目で盗み見た。
そして後悔した。


「●…」
「好きじゃなくてもいいけど、この気持ちが偽物なんて言わないで」


瞳に溜めた涙が、頬を伝う。
次の瞬間、気付いたら椅子が小さく軋みながら揺れていた。


「先生…?」


腕の中で●が呼んだが、顔を見られたくなくて腕に力を込めた。
昔から感情的になるなと言われていたのに、それはこの歳になっても直っていないようだ。
でもいつだって迷いなく行動した結果には後悔したことはなかった。


「後悔するなよ」


頷きながら伺うように背中に回された腕に愛おしさを感じながら、この後に訪れるどんな罰も俺は全身で受け止めてやろうと誓った。


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2008/6/8
(2012/5/7 加筆、旧サイトより移行)
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