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舌打ちが聞こえて彼の背後から窓の外を見ると雪景色が広がっていた。


「泊まって行けば?」
「いい」


脱ぎ散らかった服を寄せて着る仁の背中は腕の動きに筋肉が動いて、とても綺麗。
私はというと下着にキャミソールを着て外の景色とは不釣り合いな姿をしていた。
そんな私の姿に欲情してしまえばいいのに、なんて思うのはインランだろうか。


「コーヒーくらい飲んで行きなよ」


すっかり服を着込んだ仁に背中を向けながら台所へ立ち、出来る限り無愛想に言う。
気まぐれで始まった私達はどちらかが不適切な感情を見せたら終わりだ。
例えば愛情とか。
着たダウンジャケットを床に下ろす音が聞こえ、様子を伺うと、こちらを見ることなく窓の外を見ていた。
雪はまだ降っていて止む気配はない。
むしろ止まなくてもいいくらいだ。


「止む気配はないな」
「そうだね」


ずっとずっと降り続けばいいなんて思っても言えない。
身体は満たされても心は寒くなる一方。なんて辛いのか。
でも選んだのは私で、彼が離れて行くほうが辛いと思ってる。
コーヒーをテーブルに運ぶときに見えた道路は真っ白だ。
私とは正反対の色だと思った。
むしろコーヒーの黒のほうが私に似合う。


「寒くないのか?」


仁は質問を投げたが答えることを許さなかった。
塞がれた唇は体中の神経が集まったかのように敏感になる。
このままずっと閉じ込められたい。
そんな事を思う余裕さえ奪われる行為に、私は真っ白になる。


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2008/4/2
(2012/5/7 加筆、旧サイトより移行)
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あきゅろす。
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