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昼休み中。
コートに鳴り響く球を打つ音。
その中に身を置く私と宍戸。
それを見守る男女のテニス部員達。


「●部長!やっちゃって下さい」
「もちろんっ!!」


狙った球は見事に相手コートに置かれたダーツ用の的の中心を射た。


「宍戸、外したら恥だからな!」
「うるせぇ!岳人!」


整ったフォームで打たれた球は同じ中心を射る。
女子部員からは溜め息が漏れた。
毎週月曜に繰り広げられるこの勝負は一週間分のシャワー室の優先権を賭けている。
週替わりで相手を替えているものの、負けず嫌いの宍戸は自分の番になるといつも私を指名する。
つまり私は負けナシ。
私が連勝出来ているのは跡部がくだらないって参加しないのと、忍足が適当にしかしてないってのもあるけど。


「うわっ!!」


宍戸が打った瞬間に叫ぶ。
こういう時は大体外れる。
そして球は見事に中心より右側にズレた。


「ごちそーさまです」


女子部員と共に深々と宍戸に頭を下げ、今週の優先権を得る。


「ぜってぇ次は勝つ!」
「前も聞いた。でもいい加減勝たないとレギュラーの名がすたるよ?」
「うるせぇっ!!試合なら負けねぇ」
「いや、試合で負けたら卒業まで補欠だよ?」
「●、練習後に勝負だっ!」
「やーだよっ。」


ラケットが入ったカバンを背負い、コートを出る。


「●部長、さすがやね」
「アンタもあれくらい本気になってよね、忍足」
「そしたら放課後までやってしまうやん」
「大した自信ですこと」
「×ちゃんもね」
「部長ですから」
「でも俺知ってんで、×ちゃんが手を抜かへん理由」


眼鏡の奥の瞳がニヤリと笑った。


「…なんの事かしら?」
「宍戸相手は絶対に手を抜かへんもんなぁ、×ちゃんは。って痛いんやけど」


ニヤつく忍足の腕に歩く反動でわざとカバンをぶつけてやった。
痛い痛いと言いながら逃げる忍足を追い掛ける気にならなかったのは、熱くなる顔を隠すのに必死だったから。
予鈴がなり走り出した私の側を深い青のキャップが通り過ぎた。


「●!次も指名してやるからなっ!逃げるなよ!!」
「はいはい。いつでもお待ちしてますよー!」


私を見てニヤつく忍足が視界に入ったけど、無視して足を速めた。




もっと見て、追いかけて
でもこの想いには気付かないで
でも、やっぱり少しは勘付いて

狭間で揺れるスリル



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2006/11/02
(2012/5/6 加筆、旧サイトより移行)

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