†薔薇契約 〜engage〜† ◆7◆ …………… …… イヴは額の汗を拭うと、ローズ・ガーデンを見渡した。 「ふう、これで全部終わりかしら?」 たっぷりと水を貰った薔薇達は、心無しか喜んでいるように見える。 (ふふ、さてと…アンナさんに報告しに行かなくちゃ…) 出口の方に振り向いた瞬間、イヴは心臓が止まる思いをした。 振り返った目の前に、白いフサフサの髭を蓄えた小柄なお爺さんが立っていたのだ。 「わわ…!び、びっくりした。…お爺さんはどなたですか?」 「…ホッホッホ。ワシは城内のガーデン全体を管理しているスミスじゃ。お前さんは、イヴさんだったかのう?」 「!…はい、そうです。どうして、私の名を…?」 「先日、ルイス様からローズ・ガーデンの管理のみイヴさんという女性にさせて欲しいと頼まれての。そこで知ったんじゃ」 「ルイスが?…じゃなかった、ルイス“様”がですか?」 「うむ。このローズ・ガーデンはルイス様のお気に入りの場所でのう…。城の者達でも滅多に入る事が出来んのじゃが…。イヴさんはルイス様の特別な人なのかね?」 スミスはイヴが手にしていたジョウロを預かると、優しく微笑んだ。 「特別…?」 「そうじゃ、つまり…恋仲かと聞いとるんじゃよ」 その言葉に、イヴは慌てて首を横に振った。 「えっと…、私は、ただのメイドですから…」 「…ホッホッホ、本当に“ただのメイド”かのう…。ワシにはそうは思えんが…」 スミスは意味有りげにイヴを見ると、笑いながら何処かへと行ってしまった。 「…?、一体…、何だったの…??」 イヴは、不思議に思いつつも城内へと戻る事にした… …………… [*前へ][次へ#] [戻る] |