別れの時
「勘ちゃん……無事に帰って来てね……。」
「当たり前でしょ?俺が名前ちゃんを独りぼっちにさせるわけがないじゃない。」
彼はそう言うけれど、私は不安で仕方なかった。もし勘ちゃんに何かあったら、私……!
「そんな泣きそうな顔されたら行きたくなくなっちゃうよ……。」
「ご、ごめんね……。」
実習なんだから仕方ないじゃない。勘ちゃんを困らせるわけにはいかないよね……。
「大丈夫だから、ね。」
「勘ちゃん……!」
ぎゅっと抱きしめられ、私も彼の背中に手をまわした。彼の温もりが愛おしくて、離れたくなかった。彼にもし何かあったら……そう思うと不安で仕方なくなる。でも無事に帰って来てくれると、信じなければ。
彼の肩越しに迎えが来たのが見えてしまった。勘ちゃんと仲の良いあの四人だ。私と目が会った鉢屋三郎が溜息混じりにこう言った。
「ただの女装の実習でいちいち騒ぐなっつーの。」
馬鹿馬鹿しい別れの時
(名前ちゃん……!)
(勘ちゃん……!)
(うっぜ!こいつらうっぜー!)
(このバカップルめが!)
(ほらほら勘ちゃん、名前ちゃんから離れて。)
(……置いてく?)
20100219
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