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さぁ、しましょう


「好きよ、勘ちゃん。」
「俺も好きだよ、名前ちゃん。」

にっこり微笑んだこの男の何と人が良い事か。
否、馬鹿な男だ。騙されているとも知らずに。男なんて皆馬鹿。ちょっと良い顔すれば簡単に騙されて。
これでこの授業は『優』を貰えそうね。鉢屋三郎は一癖あるからパスしたけれど、同じく学級委員の尾浜勘右衛門を落としたとすれば評価されるだろう。

こうなればもうこの男は用済み。もう全てをばらしてこのお飯事もお終いにしましょう。

騙していた事を告げる為に私は口を開いた。

「ねぇ、尾浜。」
「ダメだよ、名前ちゃん。今までみたいに勘ちゃんって呼んでくれなくっちゃあ。終わらないよ。終わらせないんだから。」
「え……?」

彼のいつもと変わらない人の良い笑顔が何故か恐ろしく感じた。

「全部知ってるよ。名前ちゃんが授業の為に俺に近付いたのも、俺の事を少しも愛していないのもね。それでも名前ちゃんは一瞬でも俺のものになったんだ。」

私は仮にも付き合っていたのに、尾浜勘右衛門の表の部分しか見えていなかったらしい。騙していたと思っていた男に、私は騙されていたのだ。

「もう絶対離さないからね。」

今になって悟った。
鉢屋三郎の方が断然良かったんだ。この男は騙す対象にしてはいけなかったのだ。

「ね、名前ちゃん。」

きゅっと尾浜に掴まれた手が、ひんやりと冷たくなった気がした。



ごっ




(俺が愛してさえいれば良い。君の気持ちなんて関係ないんだよ。)




20101018

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あきゅろす。
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