月 忍務がある日だというのに、今夜は月が明るく光り、私達の姿をくっきりと照らしていた。 案の定忍務はしにくく、何人か傷付けるはめになった。生死は不明。 でも忍務は勿論成し遂げる事が出来た。相方がとても優秀な忍者のたまごだったから。 目の前を歩く彼、久々知兵助は文武両道で真面目で、私が居なければもっと楽に忍務をこなせただろう。私は馬鹿で、浅はかで、体力しか取り柄がなくて……こんなんじゃ久々知の隣に並んで歩けない。 久々知だったら私みたいに返り血を浴びて、酷い臭いをさせる事もなかっただろう。 悔しい。こんなんじゃ、許される気がしない。私が久々知を好きでいて良い気がしない。 想いを告げるつもりはないけれど、想い続ける許しが欲しい。もっと、忍としての力が欲しい。 だから今はせめて、一言だけ。 「ねぇ、久々知。」 「月が綺麗ですね。」 (忍にとって不利な月の明かりでも、貴方と共に見られるのならば、それすらとても愛おしいのです。) 20100922 戻る |