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思考回路はショート寸前


「はぁ……。」

疲労感のあまり、思わず溜息が出た。

「何だ名前、溜息なんか吐いて。幸せが逃げるぞ。」
「誰のせいだと思ってんのよ!」

掴んでいた縄を引くと神崎の口から変な声が出た。どうやら首が締まったようだ。
この縄を私に託した富松を怨みたい。すばしっこい神崎が居なくなったら私じゃ絶対見付けられないわよ。まあ富松は次屋を探しに行ったわけだから、彼は彼でまだまだ苦労が続くわけなんだけど。

「神崎……富松が戻って来るまでじっとしててよね……。」
「何でだ?」
「何でって、そりゃあ……!」

決断力のある迷子を私一人で探せる自信がないし、富松に絶対怒られる!

「僕が何で名前から離れなきゃいけないんだ?」

次屋もだけど、気が付いたら迷子になってるのが当たり前というか……。確かに離れる理由はないけど。

「僕は名前の側にずっと居たい!」
「……へ?」

何か話がちょっと違う方向に行ってる気が……。

「僕はいつも名前に会いに行ってるんだから、何処かに行く必要なんてない!」
「わ、私に……?何で?」

神崎は私に会いたかったらしい。その割にはよく会うわけでもない。……迷子になってるわけか。

「好きなやつに会いたいと思うのは当たり前だろう!」

え、ええぇぇぇぇぇ!!
驚きの言葉すら声にはならず、口をぱくぱくと金魚みたいに動かす事しか出来なかった。思わず縄を落としてしまっても、神崎は何処かに行ってしまう所か、私を抱きしめた。
て、展開に付いて行けないんですけど!

「か、神崎……!」

神崎はチビだし、いつも口開けて馬鹿みたいな顔してるし、決断力のある迷子だけど、たまに凄く男前で……いやでもやっぱり神崎だし!ないないないないないってば!神崎をそんな風に考えた事なんてないよ!このドキドキだって初めて異性に抱きしめられたからで、神崎だからってわけじゃあ……!

「……あ。」

ぐるぐると訳がわからなくなって来た所で、いつ戻って来たのか次屋を引き連れた富松と目が合った。

「わ、わりぃ!邪魔するつもりじゃあ……!」
「そうだ!邪魔だ!」
「え、ちょっと待って!!」

この場を去ろうとした富松を全力で引き止めた。
置いてかないで!









(取り敢えず……名字が居れば左門は迷子にならないって事か……。)
(人を便利道具みたいに言わないで!)




20100717

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