知ってしまった
学園内にある大きな桜の木は今年も綺麗な花を咲かせていた。
此処は私の絶好のサボリポイントだ。今日もまたサボろうと来たのは良いけれど、先客が居て驚いた。それ自体は珍しくないけど、驚いたのはその先客が久々知兵助だったからだ。
兵助がサボリとか珍しいな……と思って横になっている彼を覗き込むと、寝ているようだった。ああ何だ、寝過ごしてしまったのかと妙に納得した。
「へーすけ。」
じゃあ起こしてあげた方が良いだろうなと肩に触れても起きる気配がない。もしかしたら実習続きだったらしいから、疲れているのかもしれない。
その時ひらりと花びらが兵助の頬に落ちた。彼の白い肌には薄い桜色もよく映えた。花びらを取ってあげようと彼の頬に触れるととても冷たくて……彼の体温が低いのは知っているけど、これじゃあまるで……
ぽとりと兵助の頬に雫が落ち、彼は目を覚ました。
「……名前……?」
彼は驚いたように目を見開いている。
「何で泣いてるんだ……?」
そう言われて自分が泣いている事に気が付いた。彼の頬に落ちた雫は私の涙だったのだ。
「……わから、ない。」
どうしてそんな風に思ってしまったのかわからない。桜の木の下だったからかもしれない。桜の木の下にはそれが埋まっているとか誰かが言ってたから。
だから。
だから、兵助の死を想像してしまった。
それと同時に貴方には誰よりも生きていて欲しいと強く願った。その理由は……出来ればこんな形で気付きたく、なかった……。
貴方への愛を知ってしまった
(貴方が忍になってしまうのがとても怖い)
20100403
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