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見るな!


ぱしゃん、と音が聞こえ隣の机を見ると委員長の潮江先輩が頭から水を被ったようだった。前には湯のみを持った名字先輩が。どうやら名字先輩が潮江先輩に湯のみの水をぶっかけたらしい。
……またですか。せめて食堂では静かに食事をして頂きたい。

潮江先輩と名字先輩と同じ机を囲んでいた六年生が私の方にランチを持って避難して来た。

「邪魔するぞ、田村。」
「全く飯も食ってらんねぇ。」
「僕にも水が掛かったんだけど……。」

慣れた様子なのはあの二人の喧嘩が日常茶飯事だからだ。同じ会計委員であるあの二人は委員会でもよく喧嘩していた。名字先輩は私や左門、後輩には優しく笑顔を絶やさない良い先輩で左吉や団蔵も懐いている。皆名字先輩に憧れを抱いてる程だ。も、勿論、私も……。しかし潮江先輩相手となると名字先輩は何時もこうだ。それが不思議で仕方ない。ああほらまた言い合いが始まった。食堂に居る全員が二人に注目している。……同じ委員会の人間として恥ずかしいんですが……。

「何故あの二人は仲が悪いんでしょうか?」

ずっと疑問に思ってた事を聞くと、潮江先輩と同室の立花先輩が答えてくれた。

「なんだ、田村は知らないのか。あいつらあれでも恋仲だぞ。」

………………はい?

「名字がああなのは文次郎には本音で話せるからだし、喧嘩してもすぐ仲直りしているぞ。しかも毎回文次郎が謝る形でな。滑稽だろう?」

くつくつ笑いながら言う立花先輩の声は私には届かなかった。
潮江先輩と名字先輩が恋仲……!?
私の中で何かが崩れて行った。

「……うっわー……その様子じゃ知らなかったみたいだね。」
「しかも名字に淡い恋心を抱いていたとみた。」

まわりの六年生の私を見る目が一気に可哀相なものを見る目に変わった。









20100109

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