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不破雷蔵と


一つ上の名字名前先輩は話す事が出来ない。

それは生まれもったものではなく、後天的なものらしい。
戦で両親を目の前で殺されたショックによるものだと人伝いに聞いた事がある。後輩にも一人、戦で両親を亡くした子がいるが、その心の傷が名字先輩は僕らにもわかる形で出ている。

それを先輩は、どんなに拷問されても忍務をバラす事が無いのだから私ほどくのいちに向いている人間はいない、と笑って言っていた。(と言っても筆談だけど。)
それはきっと悲しい事なのだろうけど、僕は何て言えば良いのかわからなかった。
ただ確かなのは先輩がそんな状況に追い込まれないよう僕が守ってあげたいと、強く思ったんだ。

「名字先輩、たまには勉強以外の本も読んでみたらどうですか?」

面白いですよ、と一冊の物語を差し出せばにっこりと微笑んでくれたが、読んではくれなさそうだ。
先輩はいつも忍術の為の本しか読まない。自分の力を高める、ただそれだけの為にこの図書室に通っているのだ。

名字先輩。僕は心配なんです。
先輩のくのいちを目指す理由が何なのか。
もし、復讐の為だとしたら……。
僕なんかが口を出す事なんかじゃないかもしれない。でもそんな悲しい事、先輩にして欲しくない。

名字先輩にはずっと笑っていて欲しいから……。
僕が望むのはただそれだけなんです。




20111024

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