笹山兵太夫と
「名前先輩、俺の部屋に来て下さい!新しいカラクリを仕掛けたんです!」
「……いや、遠慮します……。」
そのカラクリに嵌める気満々じゃないか。伝七も伝七で困った奴だったけど、こいつは本人も自覚しているただのドSなやつだ。
「名前先輩こっちですってば!」
ぐいぐい私の手首を掴まれ、引っ張る兵太夫を冷たくあしらうなんて事出来なかった。
そして兵太夫の部屋の前に辿り着いてしまった。
「ね、兵太夫。嫌だってば……!」
「名前先輩お願い!見るだけで良いからさ!」
兵太夫に強くお願いされると断る事に戸惑いを覚えてしまう。
ついに引っ張られるがままに部屋に入ってしまった。
すると兵太夫はくすくすと笑いながらこちらを見た。その笑顔はぞくりとするような何かを企んでいるような、それでも美しいものだった。
「俺、わかってるんですよ。名前先輩が他の作法委員に比べて俺には甘いって事。」
はっきりと言い当てられ、私は何も言い返せなかった。そんなつもりはなかったのに、無意識でやってしまったんだろう。……そうしてしまう理由があるから。
「そんな事されたら俺、期待しちゃいますよ?」
ぐっと手を引き寄せられ、唇を掠め取られた。
驚きのあまり働かない頭で、ずっと掴まれていた手首の痛みだけをやけに感じた。
「さあ名前先輩、落ちて下さいね。」
それをどう捉えて良いのかわからなかったけど、兵太夫は天井からのびる縄を引っ張った。
……どうやら今日もまたこの部屋からなかなか出れなくなりそうだ。勘弁して下さい……。
20100308
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