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05


名前さんは今日掃き掃除をするらしい。嗚呼あの人の事だからきっと薄着で寒いのも気にせず外に居るんだろうなぁ。そう思うと気になり出して保健委員の仕事も手につかなくなりそうだったので、羽織を持って名前さんの元に向かう事にした。

「名前さーん!」

名前さんはすぐに見付かった。でもやっぱりと言うか、案の定薄着だった。

「名前さん!またそんな薄着で外に出て!まだ体調万全じゃないんですから、風邪でも引いたらどうするんですか!」

羽織を掛けた時に触れた体はとても冷たかった。思わず彼女の腕を摩った。

「ああ、こんなに体を冷やしてっ!顔も凄く冷たいじゃないですか。」

彼女の頬に触れると勿論冷たくて。……自分の体なのにどうして大切にしないんだろう。
数日前の彼女を見付けた時の姿が脳裏を過ぎった。左手首から流れる血。刃物の類は落ちていなかったが、今まで何度も同じような事があったであろう傷痕、真新しい躊躇い傷。自傷行為である事は明らかだった。

「……もっと自分を大切にして下さい……。」

言わずにはいられなかった。
僕が彼女の心に何処まで入り込んで良いのかわからなかったけど、やっぱり知らない振りは出来るわけがない。

「……あの〜……。」

僕が来るよりも先に此処に居た乱太郎が声を掛けて来た。勿論乱太郎の後ろには何時もの二人も一緒だ。

「私達お邪魔なようなので失礼しま〜す。」

にやにやした乱太郎達の顔を見てふと今の状況を考えてみた。
名前さんの頬に手を添えて、至近距離で見つめ合っているこの姿はまるで……
そこまで考えた所で顔が一気に熱くなった。

「ち、違うから乱太郎!」

慌てて否定したものの、彼女は至って冷静だった。あれ、意識したのって僕だけ?

「頑張って下さいね、善法寺先輩!」

頑張るって何を?!
走り去って行く乱太郎に言いたかったが、きり丸の彼女を見る鋭い視線に気を取られ発する事はなかった。



*



「オレ、あの人嫌いだ。」

オレがはっきりそう言えば、二人は驚いたように目を見開いた。

「珍しいね、そんな風にきり丸が言うの。」
「笑ってはくれなかったけど……そんなに嫌な人かなぁ……?」
「二人は見たか?」
「何を?」
「…………。」

二人は気付かなかったようだ。じゃあオレがわざわざ言う必要もない。あの人の手首の包帯の意味を知れば、二人が悲しい顔をするのがわかるから。包帯から覗く古い傷痕も見えた。その傷の意味は何度も自分を殺そうとした事。

だからオレは名字名前が嫌いだ。




20100115

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