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ぎゃふん2*

 
 
 
 
「お…お邪魔します………」
 
 初めは薄く扉を開くと暖かい湯気が肌にまとわりついた。
 正面を見ないようにと床に目を向け、恐る恐る顔を上げる。
 
 湯船にチラリと目を向けると、湯船の淵に片肘をついて寛いでいるデンジがいた。まじまじと見ると色々と誤解を招きそうなので直視はしないが、視界の端に映る水面は白の入浴剤がふんだんにぶちまけられたおかげで不透明であった。
 
「本当に来たんだな」
 
「え、もしかして冗談だったの?」

「いや。恥ずかしいだあーだ言ってたから、行ったっきりで戻ってこないと思ってた」
 
 あの後そのまま流されるように風呂に連れられた時、服を目の前で脱ぐのは凄く気不味いと思った 名前は「着替え持ってくるから先に入っていて」と逃げるようにその場を去ったのだ。
 確かにあの場を去った後に一度、戻らなくても良いのでは?と思ったが、二人でゆっくりする事は久々だった事と、デンジを拒んでいるようで悪いという事が考えられ踏ん切りがつかない状態のまま戻ってきてしまったのだ。
 おかげで彼を目前にし、頭の中はとてもじゃないが冷静ではない。
 
「まあそれは置いといて、入ったらどうだ?
 そんな格好のままそこにいると風邪ひくぞ」
 
「そう、だね」
 
 ぎこちない笑顔のような、引き笑いというのか苦笑いというのか、そんな曖昧な表情をしてしまった気がする。
 目を逸らしてもギスギスと刺さる視線が痛いほどわかり、身体に巻いている白い簡素なタオルを掴む力が強まる。
 まるでこそ泥のような挙動不審な動きでバスルームに入り、取り敢えずと言わんばかりにシャワーに手を伸ばす。
 
(濡れたらタオル透けるよね。
見られるのは気不味いから壁向いてもらおうかな……)
 
 シャワーを両手で掴み、睨みつけるように見つめていると声をかけられる。
 
「見てないからさっさとすませろよ」
 
 心中察したのか。
 デンジは何処を見るというわけでもなく、こちらからただ視線を外していた。
 意外と気が利くんだな、と思いながらその横顔を見る。
 湯船に長く浸かっていたのか、頬は赤みを増し、水滴を髪から垂らし、薄く開けられた唇が呼吸で微かに動いている。
 憂いを帯びたような青い目は勿論こちらを向いていない。
 
(いやいやいや、何見惚れているんだ変態か私は)
 
 滝行で煩悩を払う坊主かのように、シャワーから放水される湯を頭から被る。
 顔にかかる湯を手で払いながら、実は見ているんじゃないかという警戒を怠らずチラリと目を向けるが相変わらずデンジはこちらを見ていない。
 
(意外と紳士なんだ)
 
 さっきの押し倒しはチャラには出来ないが、と付け加えながら 名前はシャンプーのディスペンサーの頭を押した。
 白い粘りのある液が手に落ちるのをぼう、と見つめるとハッとなって顔を顰める。
 
(…………変な事考えるのはやめよう)
 
 如何わしい連想をしてしまった事に不甲斐なさやだらしなさを感じ、自分を叱りつけるように頭を強く洗う。
 
「お前凄い音してるけど、そんなに強く頭洗うと髪の毛抜けないか?」
「え?!、と、その、いつもはこうじゃないから大丈夫だよ。今日はちょっと、汗かいたから強く洗いたいなー……なんて、はは」
 
 下手な誤魔化しをしてしまった。
 明らかに動揺している様子を体現してしまい、墓穴を掘ったと顔が引き攣る。
 気不味い。再度訪れた感情を誤魔化すかのようにシャワーに手を伸ばし、泡が目に入らないように目を閉じてお湯を浴びる。
 大体流しきっただろうか。ノズルをひねりお湯を止め、シャワーを置く。そんな時、湯船の方から大きな水音がたつ。
 この音は湯船から人が出る音だ。
 まさかと思い、目を開けようとして手で顔を拭おうとするとシャワーを置いた手の手首を掴まれ、背中に人肌が当たる。
 慌ててもう片方の手で水を払うと後ろから腕が伸びているのが見えた。
 
「ちょ、っと
 こっち見ないんじゃなかったの!?」
 
「逆上せそうだったんだよ。
 ついでに身体洗ってやるから、座ったら?」
 
「絶対変な事するでしょ。
 やだよ、一人で洗えるから」
 
「わかったわかった、洗う時変な事はしない。
 で、その変な事って例えば何?しないけどそれが分からなきゃ、好き勝手やるからな」
 
「何って……変な所触ったりとか」
「変な所って?」
「そんなの言わなくても分かるでしょ馬鹿!変態!」
 
 言えないと分かっていてわざと誘導をする。
 ズルい、と憤慨していると「そう怒るなって」と、宥められる。
 そう言いつつ、更に後から腕を回してくる辺り全然離れる気はないのだと感じ取れた。
 どうしたものかと考えていると、項に生暖かいざらりとした感触がぬるりと滑る。
 
「ひゃあっ!!」

 突然項に這わさった触感に驚きが隠せない。
 いきなり何をするのかと怒りたいが、項に触れる唇や舌の感触がゾワゾワと身体中を駆け巡るような刺激を与え、言葉を出そうとするとそれに感じる声を漏らしてしまいそうになり叱咤する事が出来なかった。
 
 半パニック状態でどうすれば良いのかと回らぬ頭で考えながら耐えていると、上手い抵抗が出来ない 名前を差し置き、手首を掴んでいた手を話したかと思えばボディソープの入ったディスペンサーに手を伸ばし、器用に片手1本で中身を出していた。
 
「ちょっと、自分でやるから……できるからっ……!」
「あ、そ」
 
 聞き流すような簡素な返事、そしてその行動だ。
 お構い無しに身体を触れる手。巻いていたタオルを下げると腹部から胸へと手を滑らせ、先端を摘む。
 それを堪能すると身体中を手で這い回る。
 ボディソープが纏まりついた手は滑りが良く、情けない話だがその手が這った所は気持ちが良かった。元々力加減というか、触り方というか、そういう所が好きでもあるがいつもとは違う感触が混ざっている事が感覚をおかしくするのだろう。
 
 快感に体勢維持ができず、壁に手をついて必死に立ち堪えた。 
 
「ぁ、や……、だ」
「………」
「…んっ、」
「……、 名前」
「っう……あ、だめっ…」
「……………ココ?」
「んん、…っ違う、」
「嘘つき」

 ベロりと首を舐めあげられ、手のひら全体で胸を包み込まれるように覆われると持ち上げるように揉み上げる。指の間に胸先が挟まれ、押し潰されると襲う刺激から逃げる様に背中が丸々。
 それを逃がさないように、デンジは覆いかぶさるように 名前の背中に身体を密着させる。
 
 背中に当たる温度に呼吸を乱し、それを悦ぶように、快感を求めるように疼く下腹部と自然に脚を艶めかしく絡ませてしまう自身のはしたなさは、今の名前に取っては追い打ちをかけられているようにしか思えなかった。
 顔を俯かせ虚ろに床を眺めていると、「 名前」と声をかける。
 何事かと呆けたように振り向こうとすると、それを利用し身体を反転させられる。
 反抗する力がない状態で壁に押さえつけられると、力無い目でデンジを見つめた。目が合うと惚けた表情を浮かべ、薄く口を開いて引き寄せられるようにそのまま口を重ねてきた。
 舌を絡ませる事を望んでいるのか、口内の舌をつつかれ、それに応えるように舌を押し返すと深く口を触れ合わせ、舌を絡める。
 夢中になっているのか、壁に押し付ける力が強くなり押し潰されるのではないのかと思えた。
 
 10秒程キスをすると、デンジは口を離す。
 目線が合い、唇同士を繋ぐ唾液の糸が弧を描いて途切れると、視線は逸れ、再び手を這わせる。
 しかし這う手の場所は太股へと変わり、股の付近を彷徨うような手つきだった。
 待ち遠かった快感が近寄る事で下腹部はさらに疼いたが、脚は擽ったがってそれを拒んだ。
 普段なら早々それを割る事は出来ないが、滑らせやすいボディソープが絡みついている手はそれを簡単に受け入れさせると、そのまま割れ目を指でなぞり上げる。
 
「んっ」
 
 触れられた事で初めて気がついたが、そこは触れられるのを待ち遠しくしていたかのように濡れ、触れる指を直ぐにでも含みたいとばかりになっていた。
 思わず顔を覆ってはしたないと嘆きたくもなった。

「随分と焦らしてたんだな。
 こんなに濡らしているとは思ってなかったんだが」
「っ………だって、」
「なあ、どうしてもらいたいって考えてた?」
「どうって、言われても………」
「こう、とか?」 
「あっ、ちょ…っと!」
 
 割れ目をなぞり上げていた指をくぷりと浅く沈め込む。
 違う、と叫びたいが待ち切れた快感がようやく起き、混合した気持ちが起こした行動はデンジの腕を僅かに拒むように掴む事だった。
 しかし腕を掴んだからそれが止まるわけではない。
 デンジの反応を伺う表情は子供の探求性と大人の悪戯性が混じった物で、それを楽しむように動かす指はよく 名前を知っているようで、まだ探り探りな所もあった。
 クチュリと音をたてて、人差し指と中指で浅い部分をバラバラに弄る。
 
「ん、……っ」
「…」
「ぁ…、…っだ、め」
「…」
「やめ…、や……デンジ」
「……ん」
「ぁ、あっ」
「…」
「……や、……ぁっ、あっ…」
 
 ビクリと身体が震える。
 声に艶が出始め、そろそろイきそうになると分かる。
 指が動く度に鳴る水音は混し、耳を犯していく。
 限界が近い。押し登るような快感に恐怖し、 名前はデンジに縋り付く。
 このままいけば確実に達っする。
 
 肩を震わせ、快感に飲まれながらそう思ったその時、デンジは指を抜いた。詰まった快感が解き放たれるように逃げ、身体が楽になる。
 
「デンジ…?」
「?どうした」
「ううん、………その、急に止めたから何かあったのかな、って思って」
「……別になにも。
 身体を洗い終わったから流してやろうと思っただけ」
 
 ああ、そう言えばそうだった。
 初めはあんなに変な事だあーだこーだと拒んでいたが、当初の目的を忘れて没頭していた自分に対し、あくまで身体を洗う事をまさか全うしていたデンジに呆気に取られる。
 
「あ、うん。そう、だね」
「ほら。流してやるから座れよ」
 
 なんだか、完全にその気になっていた自分が恥ずかしい。
 1文字に口を紡ぎ、短く返事をすると目を合わせないように床に座り込んだ。
 
 
 
 
 視界はシャワーの湯気で僅かに霞んでいた。
 後から浴びせられるお湯は心地好く、先程の出来事が無ければこのまま寝てしまっても良いかもしれないと思わせた。
 
(どうして途中でやめたんだろう。
もうイったと思ったとか…やる気無くなったとか……)
 
 初めて達する寸前で止められ、 名前は不安な気持ちが取り巻いていた。深く考え事をしていると、デンジの手が膝を抱えていた腕をに引っ張る。
 
「どうしたの?」
「さっきそこも洗っただろ。そこ流すから、腕どけるぞ」
 
「あ、そうだね、…」
 
 片手で脚を開かられると、そこにシャワーを当てる。
 シャワーから出るお湯の勢いが下半身を刺激し、先程の快感を掘り起こす。思わず声が漏れそうになったが、それを押し殺し平常を見せつける。
 しかし、そこにシャワーを当てがう時間は他より明らかに長く、完全に狙っているとしか考えられなかった。
 
「……ん、…っ」
「 名前、」
 
「こういうの、初めてか?」
「え、うん……っ、あっ…」
 
 脚を掴んでいた手は足の間へと伸び、割れ目を押し開く。
 そこにシャワーを当てると、割れ目上の突起ごと刺激され身体が跳ねた。
 
「ん、ぁっ……っ」
「……さっき、イキそうになった時止めたの嫌だったか」
「…ん、や、……だったかもしれない、っん……」
 
「悪い。わざと寸止めした」
 
「さっき、自分から誘うの嫌だとか言ってただろ。
 逆に絶対言わせたくなって、それで止めた」
「っぁ…そう、なんだ……あっ」
 
「ぁあ、ぁ、……っん」
 
「ぁっ、や、あっ…デンジ……デン、ジっ!」
 
「……っ、 名前悪い、やっぱまだイかせたくない」
「ふぁ、はぁっ…ぁ、…どうして…?」
 
 ザアザアとシャワーの音が響く。ノズルを締め、2呼吸程置くとバツが悪そうな顔をしてデンジが呟くように話す。
 
「悪い、その……寸止めした時のお前ほんと興奮する……
 馬鹿みたいだって思われるかもしれないけど、さっきイキそうになって止めた時のお前の悲しそうな顔見た時、無茶苦茶に犯したくなったし…その後また触れると惚けた顔するのが可愛くて………」
「そっか、」
「悪い、」
「ううん、嬉しいよ。
 やる気なくなったと思っちゃったから」
「ん、そうか」
「でもね」
「…ん」

 
 ぽつりと呟くと、デンジは目を丸くしたと思いきや顔を真っ赤にし、呻き声をあげて抱きついてきた。
 
「風呂上がったらベッドに行くか」
 
 
 
 
 
 
 名前は風呂からあがると、ドライヤーで髪を乾かしていた。
 そのままでも良いと言ったら、「風邪ひかれたら困る」と言われたからだ。
 「焦らしたいだけじゃないか」と言うと、また顔を赤くして勘弁してくれと懲りた姿は、いつも余裕があるデンジには珍しく可愛いと思ってしまった。
 
 
 それにしても自分からこんな言葉が出るとは思いもしなかったな。
 
 
 
 
 
 
「最後は、ちゃんと気持ちよくなりたいな」
 
 
 

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